本研究は、北海道の沿岸で海岸漂着物の調査を行い、現在の海洋環境の特徴を捉え、これらを教材として活用することで、博物館における環境教育の有効性を明らかにすることが目的である。最終年度には、以下のことを実施した。 野外調査:オホーツク海沿岸(稚内市~根室市)で調査を行い、宗谷海峡から流入する対馬海流(暖流)によって運ばれたものと推定される漂着物の分布を明らかにした。生物相からは寒流系生物が卓越し、2015年度に調査した太平洋東部地域と類似することが明らかになった。また定点とする余市町浜中海岸で調査を行い、2015年度までの調査結果と同様に、これまで北海道には生息しないとされた暖流系貝類を確認した。その結果、この場所ではこれらの貝類が継続して越冬・繁殖していることが明らかになった。 教材開発:これまでの調査の成果を元に、研究代表者が入会する北海道自然史研究会と連携・協力して、【漂着生物の体験・展示用キット】を作成した。また、打ち上げ貝類と海浜砂を教材とした体験キットを作成し、北海道博物館にある、さまざまな体験活動ができる「はっけん広場」で公開した。 成果の公開:野外調査の結果や開発した教材を用いて、一般市民向けの講座やイベントを開催・出展した。また、当館では展示会「きれい?不思議?楽しい!?漂着物-北の海辺でお宝みっけ-」(2016年10月14日~11月27日)を開催し、来館者に漂着物解説書を配布した。さらに、関連学会や研究会等で研究発表を行った。 学会の招致:全国または北海道の漂着物の最近の研究成果を通して、漂着物に対する市民の関心や意識を高める機会となることを目指し、第16回漂着物学会北海道大会を当館で開催した。
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