本研究では、自然環境をはじめ国土に関する基盤情報(ビッグデータ)を共有し、それらを活用した効率の良い国土管理や環境保全計画の策定を行うため、統計的手法によりマルチスケールで保全上重要な地域を評価・予測する数理モデルを開発し、予測の精度・頑健性・汎用性の検証、重要地域の明示、現実的なロールモデルについての研究を行ってきた。当初予定していた研究期間である2015年度までに、当初の研究目的である数理モデルと保全上の重要地域の明示については終え、希少種の分布情報(全国1800か所超)のデータ入力を終了し、解析に必要な植生等の環境情報をデータベースとして整備し、生物多様性の保全上、重要な地域の明示を試みた。 研究期間を延長した2016年度は、2015年度に引き続き、生物多様性の評価・予測モデルの精度向上策について検討を行い、新たな環境調査技術のひとつであるドローン(UAV)を用いた空撮と高精細な環境情報の抽出、ステレオペア画像を用いた3次元立体計測の精度検証に取り組んだ。また2015年度までに得られた成果を活用し、効率の良い国土管理や環境保全計画の策定を支援する学術的基盤を構築し、産学官民の各分野で現実的なロールモデルの提案を目指した研究に取り組んだ。具体的には、人口減少や防災・減災、地方創生といった国内の重要課題に対し、生態系や生物多様性を活用した自然共生型社会の実現に向けた各種ロールモデル(グリーンインフラストラクチャーの活用など)の分析を行い、学術誌や一般書籍、学会大会などにおいて研究成果の発表を行った。
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