本研究課題では、まずポスター閲覧者がポスターのどの部分を注視しているか、視線がどのような軌跡をたどったかといった、より高次な情報を抽出するための、カメラ用いた視線推定法を2つのアプローチから提案した。1つ目のアプローチは、計測対象者の目や顔の特徴点、人体の構造を利用し、視線の角度を算出するものである。2つ目のアプローチは、角膜に反射した画像を観測し、既知であるポスター画像から抽出した特徴を基に、機械学習を適用することで、対象となるポスターが注視されているかどうかを推定するものである。 そして、視線情報から効果的な情報提示を行うためのポスターについて、伝えるべき情報を意図した順序で伝えられるかという観点から、注視順序に着目して分析を行った。ポスターを領域に分割し、各領域の色、大きさ、視線の停留点からの距離という3つのパラメータと、画像に対する注意の向けられやすさを予測する顕著性マップからの顕著性情報を基に、注視順序を予測する確率モデルを構築した。 さらに、近年ではディジタルサイネージを始めとしたディスプレイを用いた情報提示が広く行われていることから、ディジタル情報の提示の効果に関しても分析を行った。ディジタル情報では提示画像の解像度やコントラストを部分的に変化させることで視線誘導が可能であるとの先行研究から、人間の中心視野と周辺視野の特徴に基づいて動的に解像度やコントラストを変化させた画像を提示する実験を行った。その結果、どちらも目的の場所へと視線誘導が可能であることが確認でき、コントラストを変化させる場合の方がその効果が高いことが分かった。しかし、一方で画像を変化させることによる不自然さを閲覧者が感じる割合も高くなることが分かった。
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