研究課題/領域番号 |
26750007
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研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
桜井 将人 金沢工業大学, 情報フロンティア学部メディア情報学科, 講師 (70548156)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 味覚的な印象 / 基本味 / 色相 / 明度 / 彩度 / 形 |
研究実績の概要 |
色・形に対する味覚的な印象を定量的に評価し,視覚刺激の味覚的な印象への影響を調査することを目的として本年度の研究を行った.色・形を定量的に呈示し,5つの基本味(甘味,酸味,塩味,苦味,旨味)に対する印象を主観評価により測定した.色はマンセル表色系から均等に三属性(HVC)を変化させた257種類,形は円,三角形,四角形,星形,ハート,多角形など10種類とした.被験者は呈示された色・形における基本味の印象を各味に対して,1:ほとんど感じない,2:わずかに感じる,3:やや感じる,4:感じる,5:非常に感じる,の5段階で評価を行った.被験者は20歳代男女各10名の計20名であった. 各色・形に対する被験者の評価を平均し,各刺激の味覚的な印象に対する評価値が得られた.色刺激の甘味,酸味に関して,5R,5Yの赤・黄色系の色相において彩度が増加するに従い,甘味,酸味を感じている結果となった.苦味に関して,Nの無彩色や低彩度の色において明度が減少するに従い,苦味を感じている結果となった.塩味と旨味に関しては色刺激の影響が小さい傾向にあった.形刺激では,甘味と旨味についてはハートおよび円が,酸味については星型や三角形に対して,それぞれその評価が高くなり,各味覚的な印象を与えている傾向を示した. 色と形の組み合わせの実験として,甘味,酸味,苦味の評価で最も強い印象を与えた色各3色計9色及び味覚的な印象を与えた形5種類(ハート,円,星,三角形,四角形)を組み合わせた計45刺激について同様の実験を行った.被験者は20歳代10名であった.甘味の評価の高い色・形の組み合わせ(色:5R7/14,形:ハート)では評価値は増加したが,甘味評価の低い色と評価の高い形の組み合わせ(5Y9/12・ハート)は評価値が減少していた.従って,味覚的な印象は色刺激に優位に影響している傾向が得られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,視覚刺激の味覚的な印象への影響を調査することを目的として,色・形を定量的に呈示し,5つの基本味(甘味,酸味,塩味,苦味,旨味)に対する印象を主観評価で測定することであり,色刺激257種類,形刺激10種類に対して被験者20名の結果が得られた.結果として色の三属性各々における味覚的な印象評価の様相や,形における特徴的な味覚的な印象結果が得られ,おおむね順調に進展している.また得られた結果より,色・形の組み合わせた刺激による実験も45種類の刺激に対して10名の結果が得られ,形より色の印象が優位に働くことが分かり,計画通りに進んでいる.これら結果の一部は国際会議に投稿し採録され,発表予定であり,計画通り進展し有効な結果が得られた裏付けと考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,パッケージデザインを支援するためのツールを作成することを目的として,パッケージの色・形を入力することで5つの基本味の印象を数値化しレーダーチャートのように視覚的に表現するツールを作成する.前年度の結果をもとに,色としてマンセル表色系の色相・彩度・明度であるHVCと形を入力させ,5つの基本味(甘味,酸味,塩味,苦味,旨味)に対する印象をレーダーチャートで数値化して視覚的に表現する.色に関してはHVC各々を入力する.形はアイコンから選択する.入力された色•形の図形が表示される.出力結果のレーダーチャートとしては,色のみ,形のみ,色と形の組み合わせの3種類に対する結果を表示する.前年度の色と形の組み合わせの評価に対応する場合はその評価結果を表示する.対応しない組み合わせに関しては,前年度の評価結果をもとに補間する方法を考案し表示する.または複数色及び形の組み合わせの評価実験を行い,結果をツールに反映させる. さらに,市販されている食品パッケージを数十種類選び,そのパッケージに使われている典型的な色を色彩輝度計を用いて測色する.測色値より最も近いマンセル表色系の色を抽出する.またそのパッケージに使われている典型的な形を調査する.上述の色と形をツールに入力し出力された結果と実際の食品パッケージから受ける印象を比較しツールの有効性を検証する.
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次年度使用額が生じた理由 |
測定器購入により物品費が予定より必要となり,その分他の支出を抑えた.また研究成果の報告にあたり,年度内に開催している適切な学会・研究会がなく,その分の支出も抑えられたことが理由である.
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次年度使用額の使用計画 |
パッケージデザイン支援ツールを作成するためのソフトは必要であり,その費用を見込む.また,年度末に国内及び海外学会での成果報告を予定しているため旅費を計上し,学会誌に成果をまとめるため,投稿費用を見込んでいる.
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