本研究の目的は、フランスにおいて、自分の子どもにとっての保育の質の向上という素朴な関心が、保育の専門職員養成制度やその就労のあり方を通じた労働の質に対する関心として社会に接続され、制度化されるプロセスを把握することである。具体的には、①親が保育サービスに参加するという社会的な動きと平行し、②ヨーロッパ全体での保育政策の動向とのかかわりやフランス国内における専門職員養成の仕組みや保育政策の動向を整理することである。本年度の研究調査は昨年度に予定していた聞き取り調査日程のずれによる遅れを補うために実施された。 したがって、本年度は、これまでの調査をまとめ、補足するための調査を行いながら、自分の子どもにとっての保育を社会的な子育ての質の向上につなぐ組織として機能する親がつくるアソシアシオンを経営母体とした保育の全国組織(ACEPP)の取り組みを、労働協約義務化の取り組みの面から取り上げるとともに、ACEPP組織内部で研修制度創設に貢献した人物への聞き取りを行った。その結果、①ACEPP職員およびボランティア(元・親経営型保育参加者)が関係者としてその取り組みを押し進め、ボランティアとして参加する親たちのキャリア形成に寄与する副次的な効果があること、②協働のあり方を学ぶ実践の場を提供する市民的ガバナンスを作り出したことが示唆され、学会報告としてまとめた。 また、フランスにおける保育職と人材育成について、ACEPPと保育職員養成学校との連携の観点から職業認定制度の活用を対象にし、関係者にインタビュー聞き取り調査を行った。その結果、③研修が社会的参入施策の一環として推進される中で、保育領域と労働領域をつなぐ実践がアソシアシオン分野で形成される過程として一つの事例をまとめることができた。
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