本研究は、地域社会の中で暮らしながら、時には男女の縁を取り結ぶ「地域の仲人」に着目し、男女の縁を結ぶ技や知恵を明らかにするものである。研究では、「仲人」自身の結婚生活も含めたライフヒストリーを聞き取るようなインタビュー調査を行い、「仲人」がどのような人生を送り、結婚に対してどのような思いを抱いているのかを知るように努め、そこから「仲人」の結婚観や縁の結び方を捉えようとした。 最終年度は主に、自治体のボランティア制度の中で「仲人」をするようになった人々へのインタビュー調査に時間をかけた。ボランティア制度の中で「仲人」を始める動機には、これまでインタビューしてきた人々とは異なる理由があった。 本研究が当初より注目してきた、地域社会の中で暮らしながら、結婚相手の候補者を紹介する「仲人」からは次のようなことがみえてきた。①商売・職業上、顔が広いことから客らに頼まれたり、自ら思い立ったりして縁談の世話をしてきたが、そこで家族とともに暮らし、地域活動に積極的に参加して地域社会との接点を持つなど、地域コミュニティの重要な担い手でもある。②「仲人」たちは、結婚相手の候補者を紹介することによって、経済的な利益を得ることを目的としていない。それを期待している事例もあったが、結果としてはそこに重きが置かれているわけではなかった。③どのような「仲人」になりたいのか、どのような結婚を勧めるかは「仲人」それぞれが人生で体験したことや、自身の結婚経験が大きく関わっていた。この成果の一部については、日本民俗学会第68回年会において発表した(「結婚を希望する独身者と仲人はどのようにしてつながるのか」)。
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