研究課題
最終年度(4年目)は、メタボローム解析技術に基づいて魚肉の新たな「おいしさ」評価系の構築を行った。前年度と同条件の貯蔵試験後のハマチ(ブリ)筋肉をモデルとして使用し、前年度までに確立したGC/MSメタボローム解析によって得られた代謝成分データと味覚センサーで得られた各呈味値の相関性を解析した。当初、呈味測定は官能評価を予定していたが貯蔵試験後の魚の喫食による官能評価は安全面から問題があると判断し、味覚センサーの評価のみに変更した。味覚センサーは、味認識装置TS-5000Z(インテリジェントセンサーテクノロジー)を使用した。本機器は、人工脂質膜の電位応答から味を数値化する装置で、ヒトの味覚閾値を考慮した評価が可能であるため、本研究の目的に最適と考え使用した。呈味の測定項目は、先味として酸味・塩味・旨味・苦味雑味・渋味刺激、後味として苦味・渋味・旨味コクとした。味認識装置により得られた各呈味値を応答変数(y)とし、GC/MS分析で得られた代謝成分情報を説明変数(x)とし、SIMCA 14を用いたOPLS解析により、各呈味の予測モデルを構築するとともに、モデルの構築に重要なx変数をVIP値を指標に抽出した。なお、解析はパレットスケーリングで行った。まず普通肉では、酸味・渋味刺激・旨味コクで統計学的に有意な呈味モデルが作成された。酸味モデルでは、酸味物質であるグルコン酸などが高VIP値を示した。旨味コクでは、代表的な旨味物質であるイノシン酸が高VIP値を示した。これらの成分は、貯蔵日数と正の相関を示していた。一方、血合肉では、酸味・旨味・旨味コクでモデルが作成され、特に酸味ではリン酸や乳酸が高VIP値を示し、普通肉とは異なる成分が貯蔵により増加していた。魚種差など更なる検証が必要なものの本評価系は魚肉の呈味を化学的な視点から評価できる新たな手法となりうる。
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