研究実績の概要 |
本年度は、グルタミン酸プロテアーゼの発現解析およびβ-1,3-グルカナーゼの遺伝子構造および発現解析を中心に研究を推進した。 リアルタイムPCR法を用いて、グルタミン酸プロテアーゼ(GlGPA)の各生育ステージおよび保存期間における遺伝子発現解析を行った。その結果、GlGPAは、菌糸体、子実体原基、成熟前の子実体、そして、収穫後4週間目の子実体の4ステージで比較的高い発現を示した。本研究の結果から、GlGPAが、菌糸体形成、子実体発生、胞子成熟、そして、収穫後の老化(自己消化)に関与していることが示唆された。 Glycoside Hydrolase Family 128に属するβ-1,3-グルカナーゼ遺伝子(GlGH128A)について、RACE法を用いて、完全長cDNA配列情報を取得し、遺伝子配列解析を行った。その結果、予想開始コドンおよび終始コドンを含む塩基配列情報の取得に成功した。GlGH128Aの予想アミノ酸配列は、22残基のシグナルペプチドを含む全271残基からなり、活性残基と推測される2つのグルタミン酸残基および2か所のジスルフィド結合に関与すると推測されるシステイン残基が保存されていた。 リアルタイムPCR法を用いて、GlGH128Aの各生育ステージおよび収穫後の保存期間における遺伝子発現解析を行った。その結果、GlGH128Aの発現は、菌糸体から成熟子実体において低い一方で、収穫後の子実体において高いことが確認された。 本研究の結果から、これらのプロテアーゼ及びグルカナーゼは、きのこにおける形態形成や老化に深く関与していることが示唆され、これらの酵素の働きを明らかにすることは、きのこにおける鮮度保持などに大きく貢献するものと考えられる。
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