非可食部として大量廃棄されるラッカセイ種皮は、ポリフェノールを多く含む。我々はラッカセイ種皮から、三量体プロシアニジンのエピカテキン・エピカテキン・カテキン(EEC)を単離した。EECの生理機能を明らかにすることを目的とし、以下の実験を行った。 はじめに、EECの血糖上昇抑制作用を、糖質分解酵素の阻害活性と腸管からのグルコース取り込み阻害活性の面から調べた。EECはα-アミラーゼ、マルターゼ、スクラーゼの活性を阻害した。さらに、腸管に発現するグルコーストランスポータ―に対し、グルコース透過を阻害した。 次に、ラッカセイ種皮の抗菌活性を調べた。ラッカセイ種皮はグラム陰性菌よりもグラム陽性菌に対して強い抗菌活性を示した。とくにEECは、グラム陽性の食中毒菌であるBacillus cereusに対して強い抗菌作用を有した。そこで、B. cereusをEECに0分、30分暴露した際のトランスクリプトーム解析を行った。その結果、597遺伝子の発現が有意に増加した。特に、細胞壁生合成に関与するペニシリン結合蛋白質(PBP)の遺伝子発現が増加した。さらに、細胞表層ストレスに応答するLiaRS 二成分制御系に依存するLiaIHに相同な遺伝子の発現も、EEC暴露により発現が上昇した。また、EECがB.cereusのグルコース取り込みを阻害することも確認した。以上からEECは菌体の細胞膜に存在する膜タンパク質と結合し、細胞壁の生合成を阻害することでB. cereusの生育を抑制すると示唆した。
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