研究課題/領域番号 |
26750028
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研究機関 | 兵庫大学 |
研究代表者 |
小林 麻貴 兵庫大学, 健康科学部, 講師 (70550789)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 脂質代謝 / イソフラボン / 大豆タンパク質 / 遺伝子 |
研究実績の概要 |
豆乳を植物性食品由来の乳酸菌で発酵させた乳酸発酵豆乳は、豆乳よりも強い脂質代謝改善効果がある。また乳酸発酵豆乳は、乳酸発酵豆乳中のイソフラボンがアグリコン型に変換することで脂質代謝改善効果を促進し、大豆タンパク質とイソフラボンが共存する場合に脂質代謝改善効果が促進されることが示唆された。さらに、乳酸発酵豆乳摂取ラットは肝臓でコレステロール異化代謝に関わるCYP7a1遺伝子の発現が増加し、脂肪酸合成系の遺伝子であるFAS遺伝子の発現が低下した。そのため、イソフラボンが肝臓の脂質代謝関連遺伝子発現に及ぼす影響を検討した。乳酸発酵豆乳摂取ラットの肝臓イソフラボンの濃度と同濃度になるようにHepG2細胞にイソフラボンを添加し、CYP7a1遺伝子の発現に及ぼす影響について検討を行ったところ、イソフラボンはCYP7a1遺伝子の発現を促進することが示唆された。本年度は、イソフラボンが脂肪酸合成に関わるFAS遺伝子の発現に及ぼす影響を検討したところ、イソフラボンはFAS遺伝子の発現には影響を及ぼさないことが示唆された。また、乳酸発酵処理はイソフラボン配糖体をアグリコン型に変換するだけでなく、大豆タンパク質から大豆ペプチドを生成している可能性がある。生成した大豆ペプチドのうちオリゴペプチドは腸管から吸収され、脂質代謝改善に関与している可能性がある。そのため、豆乳及び乳酸発酵豆乳からオリゴペプチドを精製し、CYP7a1遺伝子及びFAS遺伝子の発現に及ぼす影響を検討した。オリゴペプチドをHepG2細胞に添加するとCYP7a1遺伝子の発現、FAS遺伝子発現を共に低下させることが示唆された。そのため、乳酸発酵豆乳によるCYP7a1遺伝子の発現促進作用はイソフラボンが関与し、FAS遺伝子の発現低下作用にはオリゴペプチドか関与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は乳酸発酵豆乳中に含まれるイソフラボンが、コレステロール異化代謝に関わるCYP7a1遺伝子の発現だけでなく、脂肪酸合成系遺伝子のFAS遺伝子発現に及ぼす影響について検討した。また、乳酸発酵によりイソフラボンがアグリコン型に変換するだけでなく、大豆タンパク質から大豆ペプチドを生成していると考えられる。腸管から吸収される大豆ペプチドは、1KDa以下のオリゴペプチドである可能性が高いため、1KDa以下のオリゴペプチドをHepG2細胞に添加し、CYP7a1遺伝子の発現や、FAS遺伝子の発現に及ぼす影響を検討した。 まず、イソフラボンはFAS遺伝子の発現には影響を及ぼさないことが示唆された。次に、1KDa以下の乳酸発酵豆乳オリゴペプチドは陽イオン交換クロマトグラフィーで精製した。そしてCYP7a1遺伝子の発現に及ぼす影響とFAS遺伝子の発現に及ぼす影響を検討したところ、CYP7a1遺伝子の発現、FAS遺伝子の発現を低下させることが示唆された。そのため、乳酸発酵豆乳摂取によるCYP7a1遺伝子の発現促進作用はイソフラボンの影響であり、FAS遺伝子の発現抑制作用はオリゴペプチドの影響であることが示唆された。また、イソフラボンと乳酸発酵豆乳オリゴペプチドを同時に細胞へ添加した場合の影響を検討したところ、オリゴペプチドの効果が強く現れ、CYP7a1遺伝子の発現は変化がなく、FAS遺伝子の発現は低下した。イソフラボンは分子量250程度、オリゴペプチドは300~1000程度であり腸管での吸収率はイソフラボンのほうが高いと予想される。今回の実験では、腸管吸収率の違いを考慮しなかったため、イソフラボンの効果が見かけ上少なかったと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は乳酸発酵豆乳中のイソフラボンと、オリゴペプチドが脂質代謝に関連するLXRα遺伝子や、コレステロール合成に関わるSREBP-2遺伝子、HMG-COAレダクターゼ遺伝子に及ぼす影響を検討する。また、脂肪酸合成系の上流遺伝子であるSREBP-1遺伝子に及ぼす影響についても調べ、イソフラボンや、オリゴペプチドの作用遺伝子についてさらなる検討を行う。また、乳酸発酵豆乳中にはイソフラボンや大豆タンパク質、大豆ペプチド以外にも乳酸発酵によって成分変化が起こり、それらが脂質代謝改善効果を示す可能性がある。そのため、豆乳、従来から用いているLactobacillus delbrueckii subsp. delbueckii TUA4408Lで発酵したイソフラボンのアグリコン割合の高い乳酸発酵豆乳、従来から用いている乳酸発酵豆乳と同じ乳酸菌だが菌株が異なるLactobacillus delbrueckii subsp. delbueckii TUA4404Lで発酵させたアグリコン割合の低い乳酸発酵豆乳の3種についてメタボローム解析を行い、新たな機能性成分の探索を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
豆乳及び乳酸発酵豆乳オリゴペプチドの精製条件の検討に費用がかかる予定であったが、比較的短時間で精製条件の検討ができたこと、論文投稿をしていたが、年度内に論文が受理されることができなかったため、次年度繰越額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度未使用額は次年度のその他(論文投稿費)、新たな機能性成分の探索費用として使用予定である.
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