加齢や疾患による嚥下障害は摂食不良による生活の質の低下を引き起こすだけではなく、誤嚥性肺炎や栄養状態の低下の原因となり、生命予後をも左右する問題となる。炭酸飲料は炭酸の刺激によって、嚥下機能を向上させるといわれており、これまでに以下のような成果を得た。(1)内科疾患、整形外科疾患等で病院に入院しており、改訂水飲みテストにおいて嚥下障害が無いと判定される高齢者を対象に炭酸飲料による嚥下機能変化の持続時間を検討した。測定は喉頭運動、舌骨上筋群の筋活動、嚥下音の持続時間で行った。その結果として、30mlの炭酸飲料を嚥下した後は、7分にわたって嚥下運動の時間が短縮していることが明らかとなった。(2)病院に入院しており、改訂水飲みテストにおいて軽度嚥下障害と判定される患者と健常若年者を対象に、炭酸飲料嚥下時の嚥下動態を水と比較した。解析は嚥下音と嚥下後の呼気音の周波数解析を行った。その結果として、嚥下障害患者が水を嚥下した場合は健常者の周波数特性とは異なるが、炭酸飲料を嚥下した際には健常者と同様の波形を示すことが明らかとなった。これは炭酸飲料によって喉頭進入や咽頭残留が軽減しているためと推察された。 これらの結果によって、炭酸飲料は改訂水飲みテストが3~4点の軽度嚥下障害患者においては安全に嚥下することが可能で、摂食嚥下リハビリテーションへの応用や水分摂取の方法の一つとして選択が可能になることが示された。
|