研究課題/領域番号 |
26750034
|
研究機関 | 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 |
研究代表者 |
亀谷 宏美 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 食品研究部門食品安全研究領域, 主任研究員 (20585955)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | ESR / スピントラップ / 酸化評価 |
研究実績の概要 |
本研究の最終目的は、ESRスピントラップ法を用いた食用油の酸化評価法の確立である。平成27年度は、加熱による酸化・劣化処理を行った食用油を計測し、ESRスペクトルの信号変化を解析した。 基礎研究の結果より、ナタネ油を120℃で1時間加熱して計測した場合、全体的な信号の強度が増えることを確認した。この信号強度の増加量は加熱時間に依存性があったため、ナタネ油の酸化・劣化程度と相関している可能性があると考えた。そこで、酸化を促進する要因の一つである加熱処理を行い、酸化した種々の食用油から得られるESRスペクトルの信号変化を解析した。 具体的な計測方法は、3種の食用油(オリーブ油、ナタネ油、綿実油)を200μL採取して、ラジカル捕捉剤PBNを溶解、油を入れたディスポセルをESRにセットして光照射直後に1分間計測した。加熱油、非加熱の油、両者へ光照射して発生するラジカルを捕捉し、アダクトスペクトルとしてESRで観測した。一般的に酸化した油には過酸化ラジカル(ペルオキシラジカル(ROO・)とアルコキシラジカル(RO・))が生成される。そこで、過酸化ラジカルの標準スペクトルを利用して、2種のラジカルを同時観測した場合のシミュレーションスペクトルを作成した。このシミュレーションスペクトルと食用油のESRスペクトルを比較すると、両者のパラメータはすべて一致するので、油で観測したラジカルは2種の過酸化ラジカルであると同定できた。2種の過酸化ラジカルは、非加熱の油でも観測できたが、加熱履歴がある油では明らかに信号強度、すなわちラジカル発生量が増加した。非加熱から12時間加熱した油のESR信号強度は、油の加熱時間増加とともに増大した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度に予定した、加熱食用油のESRスペクトルの信号変化解析を達成した。
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、食用油の酸化評価を行う。 同一の試料を本研究により開発した手法と油脂の酸化評価として現在一般的に使用されている基準油脂分析試験法で計測する。結果を比較し、本研究で開発したESRスピントラップ法による食用油の酸化評価法の有用性を評価する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、研究費を効率的に使用して発生した残額であり、次年度に請求する研究費とあわせて研究計画遂行のために使用する。
|
次年度使用額の使用計画 |
種々の液状油、スピントラップ剤を購入する。また、スペクトル解析について助言を得るため、ESR理論解析の専門家のもとへの旅費として使用する。
|