研究課題/領域番号 |
26750037
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
中 彩乃 お茶の水女子大学, 生活環境教育研究センター, 研究協力員 (00709181)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 大豆イソフラボン / C2C12細胞 / ERRα / 脂質酸化 |
研究実績の概要 |
近年,大豆イソフラボンは生活習慣病など代謝性疾患の改善に効果的な機能性成分として注目されているがそのメカニズムは不明の点も多い。本研究では生体のエネルギー代謝の中心的役割を果たす骨格筋に着目し、大豆イソフラボンが骨格筋のエネルギー代謝に与える影響について検討した。 既存の報告や大豆イソフラボンの構造的特徴により、大豆イソフラボンは転写因子であるPPARδやERRαの活性化作用を有する可能性が考えられた。そこでまずERRαに着目し、大豆イソフラボンが、ERRαの標的遺伝子の発現に与える影響について検討した。 検討には骨格筋の筋芽細胞培養株であるC2C12細胞を用いた。C2C12細胞を一定の培養条件にて筋繊維細胞に分化させ、大豆イソフラボンの負荷を行い、各種遺伝子の発現を定量PCRによって解析した。この結果、大豆イソフラボンの一種であるDaidzeinの負荷によりMCAD (Medium-chain acyl-coenzyme A dehydrogenase)など、ERRαの標的遺伝子であり、脂質酸化に関わる遺伝子の発現が増加することを確認した。またERRαの発現ベクターを用いて、C2C12細胞に過剰にERRαを発現させることにより、Daidzeinの負荷によるこれら遺伝子の発現増加はさらに増強される事を確認した。 また近交系C57BLマウスに高脂肪高ショ糖食とともにDaidzeinを12週間投与した。この結果、高脂肪高ショ糖食により誘導される体重増加が、Daidzeinの負荷群では有意に抑制されることを明らかとした。 以上の結果から、Daidzeinが骨格筋における脂質酸化関連遺伝子の発現を調節し、肥満を制御する可能性を示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は大豆イソフラボンの一種であるDaidzeinが、MCADなど脂質酸化に関わる複数の遺伝子の発現を増加させることを明らかとし、その制御機構に転写因子ERRαが関与している可能性を示唆した。 本研究の目的は、大豆イソフラボンが骨格筋におけるミトコンドリア活性や脂質代謝を制御する可能性とそのメカニズムを解析し、骨格筋を介して、肥満や糖尿病などの代謝疾患にもたらす作用を明らかにすることである。得られた結果は、そのメカニズムの一端を明らかにするものである。さらに動物における検討においても、Daidzeinが肥満予防効果を示す事を確認できており、研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は大豆イソフラボンの中でDaidzeinを中心に検討を行なっていく。 まずは、これまでに検討を行なった遺伝子に加え、脂肪酸の取り込みに関与する輸送体や酵素、脂肪酸の分解利用に関与するβ酸化系/ TCA回路/ ミトコンドリア電子伝達系の各主要酵素、エネルギー代謝に影響を与えるホルモンとその受容体など、広く代謝に関連する分子の遺伝子発現量を定量PCRにより検討する。 またすでにDaidzeinにより発現が増強されることが確認されているMCADなどの遺伝子に関しては、より詳細な制御メカニズムを明らかにするために、レポーターアッセイを用いて、その発現制御メカニズムを解析する。具体的には、発光ルシフェラーゼを組み込んだ転写活性測定用ベクターを用いて、ターゲットとする遺伝子のプロモーター制御領域を上流に挿入したアッセイ用ベクターを構築する。ベクターはC2C12細胞に導入し、Daidzein添加による直接的な転写活性と、ERRαの関与について評価していく。さらに他の転写因子であるPPARδなどについても、本年度と同様の検討を行なっていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由としては、1)実験消耗品の購入に際して、複数社に見積もりをとるなどの工夫をして購入費用の節約に務めた結果、当初の予想よりも消耗品購入額が少なくてすんだこと、2)当初参加を予定していた国際学会の参加を見合わせた事、などが挙げられる。
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次年度使用額の使用計画 |
生じた未使用額は、次年度において「今後の研究推進方策」に従い研究を推進するにあたり、主に実験消耗品の購入に充当する予定である。
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