食品の機能性に関する研究が進む一方、脂質や糖質の過剰摂取といった食事内容によっては、血管炎症を引き起こし、動脈硬化リスクを高める要因となることが明らかとなってきた。本研究では、近年新たに解明された生体調節機構であるmiRNAによるmRNA制御に着目し、食後におけるこれらの発現変動の網羅的解析から、血管炎症に対して予防的に働く食品因子を明らかにすることを目的としている。 昨年度までに引き続き、培養血管内皮細胞(HUVEC)に飽和脂肪酸であるパルミチン酸を処理し、mRNA発現ならびにmiRNAに対する影響を検討した。昨年度実施したマイクロアレイ解析の結果から、3種類のmiRNAに着目し、リアルタイムPCRにより発現変動を確認したところ、そのうちの2種類のmiRNAに有意な発現上昇が認められた。そこで、マイクロアレイ解析の結果から、この2種類のmiRNAがターゲットとするmRNAの中で、顕著な発現減少が見られていた数種類をピックアップし、リアルタイムPCRで発現変動を確認した。その結果、いくつかの遺伝子において有意な発現減少が認められ、miRNAによるmRNA制御機構が働いている可能性が示された。さらに、パルミチン酸が引き起こす細胞死についても、種々の機構が働いていることを明らかにした。 さらに、ある種のポリフェノールによる血管内皮炎症改善作用について、種々の阻害剤の添加やsiRNAによるノックダウンなどを試み、作用機序の検討を行い、新たな知見を得た。
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