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2014 年度 実施状況報告書

n-3系脂肪酸がChREBPの分解を促進する分子メカニズムの解明

研究課題

研究課題/領域番号 26750041
研究機関神戸大学

研究代表者

中川 勉  神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50722063)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2016-03-31
キーワードChREBP / n-3系脂肪酸 / SUMO
研究実績の概要

ChREBPの分解にユビキチン化が関与しているか明らかにするため、プロテアソーム阻害剤であるMG-132処理によりChREBPが細胞内に蓄積するか調べた結果、細胞内におけるChREBPの蓄積は見られなかった。また、ユビキチン化されない変異体を用いた検討においても、ChREBPの細胞内への蓄積は見られなかった。以上の結果から、ユビキチン化はChREBPの細胞内タンパク量の制御に影響を与えないことが示唆され、n-3系脂肪酸によるChREBPの分解の亢進は、ユビキチン化の亢進によるものではないことが示唆された。
次に、ChREBPのタンパク量を制御する修飾を同定するため、様々な変異体を作成して分解の速度を検討し、分解に関与するアミノ酸の同定を行った。その結果、Importin αが結合できない変異体(K159/190A)、451-600番目、601-750番目のアミノ酸を欠損させた変異体において分解の抑制が見られたことから、これら3つの変異体すべてを修飾するSUMO化に着目した。SUMOタンパク質を共発現させることによりChREBPの分解は亢進し、SUMO化されない変異体は野生型に比べて分解が抑制されたから、SUMO化がChREBPの分解に影響を与えることが示唆された。SUMO化による分解の亢進のメカニズムを明らかにするため、SUMO化がChREBPの安定化に関与するタンパク質である14-3-3の結合に影響を与えるか検討を行った。その結果、SUMOタンパク質を共発現させることにより、ChREBPに対する14-3-3の結合が減少することが明らかとなった。この結果から、SUMO化がChREBPの分解を亢進するメカニズムの1つとして、SUMO化による14-3-3の結合の阻害が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は、ChREBPの分解におけるユビキチン化の関与を明らかにし、ChREBPに結合するタンパク質がユビキチン化を阻害することにより分解に影響を与えるかについて検討を行う計画であった。しかしながら、ユビキチン化は、ChREBPの細胞内タンパク量に影響を与えないことが明らかとなったため、ChREBPのタンパク量を制御するユビキチン化以外の修飾の同定を行った。欠損変異体など様々な変異体を用いた検討により、分解に関与するアミノ酸領域を同定し、SUMO化がChREBPの分解に関与することを示唆する結果が得られた。また、n-3系脂肪酸による分解の亢進がSUMO化されないChREBPの変異体ではみられないことも明らかにした。SUMO化はユビキチン化とは異なり、直接分解に関与することは報告されてはいないが、この結果は、n-3系脂肪酸によるChREBPの分解の亢進にSUMO化が何らかの形で関与していることを示唆している。
次に、SUMO化がChREBPに結合するタンパク質の結合を阻害し、分解に影響を与えるかについて検討した結果、SUMO化により14-3-3およびImportin αの結合が減少することを明らかにした。この結果から、SUMO化がChREBPの安定化に関与する14-3-3の結合を阻害することにより分解を促進していることが示唆された。また、Importin αの結合を阻害したことから、ChREBPの活性も制御する可能性が示唆された。
以上のことから、ユビキチン化ではなく、SUMO化がChREBPの分解に関与していることを明らかにし、ChREBPに結合するタンパク質を競合阻害することにより、分解に影響を与えることを明らかにできたことから、本年度は研究計画の大半を遂行できており、おおむね順調に進展していると考える。

今後の研究の推進方策

本年度の結果より、ユビキチン化ではなくSUMO化がChREBPのタンパク量を制御していることが明らかとなった。一方、SUMO化はユビキチン化のようにタンパク質の分解に直接関与するという報告はないことから、SUMO化による分解の亢進がどのようなメカニズムで行われているか明らかにする。本年度の検討により、SUMO化がChREBPの安定化に関与する14-3-3の結合を阻害することが明らかとなったことから、どの部位のSUMO化が14-3-3の結合に影響を与えるのか明らかにすることで、14-3-3の結合を阻害したメカニズムを明らかにする。また、ChREBPの安定化や活性に関与するO-GlcNAcやリン酸化修飾にSUMO化がどのように影響を与えるかについても検討を行う。
SUMO化によるChREBPの分解のメカニズムを明らかにした後、n-3系脂肪酸がChREBPのSUMO化を亢進するメカニズムを明らかにすることで、n-3系脂肪酸によるChREBPの分解促進のメカニズムを明らかにする。また、本年度、SUMO化がChREBPの活性を抑制する結果も得られていることから、ChREBPの分解のみならず、活性の抑制に対する影響についても検討を行い、n-3系脂肪酸による血清中性脂肪低下作用のメカニズムをChREBPの分解の亢進と活性の抑制から明らかにする。

次年度使用額が生じた理由

本年度使用した約1900千円は、実験動物を用いた実験を行わなかったため、計画よりも少なかったが、申請した消耗品費(2000千円)にほぼ沿っており、消耗品費の使用に関しては、当初の計画通りであった。
一方、本年度の交付決定額が2100千円であったことから、設備備品費として計上したルミノメーター(1100千円)と旋廻振とう型シェーカー(170千円)を購入することができなかった。そのため、本年度は消耗品費のみの使用となったことから、少しの余剰金ができ、次年度使用額が生じた。

次年度使用額の使用計画

申請したとおり、消耗品費のほか、研究成果発表のための旅費、論文校閲、論文投稿費として使用する予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2015 2014 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] Apoptotic Effects of the Extracts of Cordyceps militaris via Erk Phosphorylation in a Renal Cell Carcinoma Cell Line.2015

    • 著者名/発表者名
      Yamamoto K., Shichiri H., Uda A., Yamashita K., Nishioka T., Kume M., Makimoto H., Nakagawa T., Hirano T., Hirai M.
    • 雑誌名

      Phytotherapy Research

      巻: 25 ページ: 707-713

    • DOI

      10.1002/ptr.5305

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Association of toxicity of sorafenib and sunitinib for human keratinocytes with inhibition of signal transduction and activator of transcription 3 (STAT3).2014

    • 著者名/発表者名
      2.Yamamoto K., Mizumoto A., Nishimura K., Uda A., Mukai A., Yamashita K., Kume M., Makimoto H., Bito T., Nishigori C., Nakagawa T., Hirano T., Hirai M.
    • 雑誌名

      PLoS One

      巻: 9 ページ: e102110

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0102110

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] ChREBP-βの活性化機構の解明2015

    • 著者名/発表者名
      吉村友希、中川勉、崎山晴彦、山本和宏、江口裕伸、藤原範子、平野剛、鈴木 敬一郎、平井みどり
    • 学会等名
      日本薬学会第135年会
    • 発表場所
      神戸学院大学(兵庫県・神戸市)
    • 年月日
      2015-03-25 – 2015-03-28
  • [学会発表] 新規mTORC1結合因子P110の栄養感知システムとしての生理機能解析2014

    • 著者名/発表者名
      七里博章、山本和宏、中川 勉、平野 剛、平井 みどり
    • 学会等名
      第37回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      パシフィコ横浜(神奈川県・横浜市)
    • 年月日
      2014-11-25 – 2014-11-27
  • [学会発表] ChREBPと14-3-3の結合に影響を与える代謝物の同定2014

    • 著者名/発表者名
      中川勉、吉村友希、Qiang Ge、Robert pawlosky、R. Max Wynn、山本和宏、平 野剛、Richard L. Veech、Kosaku Uyeda、平井みどり
    • 学会等名
      第87回日本生化学会大会
    • 発表場所
      国立京都国際会館(京都府・京都市)
    • 年月日
      2014-10-15 – 2014-10-18
  • [備考] 神戸大学大学院医学研究科 薬物動態学・薬剤学分野ホームページ

    • URL

      http://www.med.kobe-u.ac.jp/yakudo

  • [備考] 神戸大学病院薬剤部ホームページ

    • URL

      http://www.hosp.kobe-u.ac.jp/yakuzai/Pharm/kobepharm.html

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公開日: 2016-06-01  

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