1.後ろ向き観察研究(治療開始時の筋肉量が治療中の有害事象や予後におよぼす影響の検討) 頭頸部癌の化学放射線療法において、治療開始時のBMIが高い患者では予後が良いという報告はあるが、筋肉量と予後との関係は明らかとなっていない。そこで、治療開始時のクレアチニン身長係数(creatinine height index:CHI)を筋肉量の指標として用い、CHI>80%のHigh群、CHI≦80%のLow群の2群に分類し、有害事象や死亡について比較した(対象者36名)。治療中の有害事象(Grade3以上の貧血、好中球数減少、リンパ球数減少を認めた患者の割合)はHigh群ではLow群より有意に低かった。放射線治療中断日数もHigh群で少なく、治療後生存率はHigh群で有意に高かった。これらのことから、治療前にCHIが高い、すなわち筋肉量が多い患者では、治療中の有害事象、放射線治療中断日数、死亡が少ない可能性が考えられた。 2.前向き観察研究(治療中の体組成変化の検討) 頭頸部癌の化学放射線療法では治療中に体重減少を生じるが、体組成変化については明らかとなっていない。本研究では12名の患者を対象に、Bioelectrical impedance analysis (BIA) 法により治療開始前、治療開始後8週の体重、骨格筋量、体脂肪量、位相角等を測定した。治療開始後8週の体重、骨格筋量は治療前に比し有意に減少したが、体脂肪量の変化は個人差が大きく、有意差はなかった。位相角は全員が有意に減少した。治療中の栄養評価は体重のみではなく体組成変化も評価することの重要性が示唆された。
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