本研究は、食行動の基本原理を解明するため、その基盤となる精密な脳内の味覚地図を単一味覚ニューロンの解析を通して作成することを目標としている。平成27年度は、「視床味覚野における塩味受容性の単一味覚ニューロンの同定および可視化」を行った。
○「視床味覚野における塩味受容性の単一味覚ニューロンの同定および可視化」:前年度トレーサーを用いて形態学的に同定した視床味覚野 (parvicellular part of the posteromedial ventral thalamic nucleus) および視床味覚関連部位 (oval paracentral thalamic nucleus、parafascicular thalamic nucleus、central medial thalamic nucleus、retroreuniens area) において、juxta cellular 法を用いて単一の味覚ニューロンを同定した後、その全体像を可視化することを目的とした。視床味覚野にトレーサーを充填したガラス電極を刺入した後、舌を塩味刺激し、塩味受容性の味覚ニューロンを特定、トレーサーを注入した。その結果、塩味受容性の味覚ニューロンの軸索は、線条体腹側部に側枝を伸ばしながら島皮質に至り、そこで軸索終末を多数分配していた。塩味以外の味質 (甘味、酸味、苦味等) に関しては現在研究を進行させている。
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