高リン血症は血管石灰化の促進因子であり、日本人における死因の上位を占める疾患の発症に強く関与しているため、血中リン濃度の適正な管理は緊急課題である。近年、食事内容に加え、深夜に飲食をする者の増加など、食事摂取リズムの乱れも問題視されている。リン調節ホルモンには日内変動が報告されているため、深夜の飲食がリン代謝に影響を及ぼす可能性が考えられるが明らかではない。そこで夕食摂取時刻の違いがリン代謝に及ぼす影響を検討した。 健常男性14名を対象とし、夕食を17:30に摂取するEarly dinner (Early-D群)、22:30に摂取するLate dinner (Late-D群)、計2回の試験食負荷試験を行った。試験前日の夕食および試験1日目の3食 (計4食) は、同一の規定食を摂取させ、24時間蓄尿および試験1日目から2日目早朝まで経時的に採血を行った。24時間蓄尿は、試験1日目7:30~12:30、12:30~17:30、17:30~22:30、22:30~2日目7:30の4回に分けて採取した。血液および尿サンプルより、リンおよびカルシウム代謝指標を測定し、夕食の摂取時刻による影響を評価した。 試験2日目早朝空腹時の血清リン濃度は、Late-D群がEarly-D群に比して有意に高値を示し、その値は基準値を上回っていた。1時間あたりの尿中リン排泄量は、17:30~22:30において、Late-D群がEarly-D群に比して有意に低値を示したが、22:30~7:30において、Early-D群とLate-D群の間に差はみられなかった。 以上の結果より、夜間の飲食はリン排泄を抑制し、翌朝における血清リン濃度の上昇を引き起こす可能性が示唆された。よって高リン血症の予防、管理において、リン摂取量のみならず食事摂取時刻が重要であり、深夜の飲食は避けるべきであることが示唆された。
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