本研究は、糖尿病性腎症の食事として低たんぱく食を用いる際に、エネルギーを充足させる栄養素として炭水化物と脂質のどちらが有用であるか明らかにすることを目的とした基礎的研究である。平成27年度は、糖尿病性腎症のモデル動物であるHos:ZFDM-Leprfaラットを用いて食事中の炭水化物と脂質の比率の違いが腎臓に与える影響を検討した。Hos:ZFDM-Leprfaラットが糖尿病を発症し、尿中蛋白排泄量が増加した21週齢時に2群に分け、一方の群には高炭水化物食(たんぱく質(P):脂質(F):炭水化物(C) = 14:15:71)を与え、他方の群には高脂肪食(P:F:C = 14:40:46)を与えた。それぞれの試験食を与えて7週間飼育した後、食餌中のエネルギー組成の違いが糖尿病性腎症モデルラットの血糖値および腎機能に与える影響を検討した。その結果、経口ブドウ糖負荷試験において、高脂肪食群は高炭水化物食群よりもブドウ糖負荷後の血糖上昇が抑制された。しかし、高脂肪食群の腎機能は高炭水化物食群よりも有意に低下していた。腎機能低下の原因を調べるため、腎臓を組織学的に評価した結果、高脂肪食群では近位尿細管細胞に顕著な中性脂肪の蓄積と糸球体の組織障害が見られた。また、アポトーシスに関わるシグナル(Bax/Bcl-2比)も上昇していた。以上の結果より高脂肪食は糖尿病性腎症において腎臓に顕著な脂肪蓄積を誘導し、さらに腎機能を低下させることが示唆された。
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