近年、アレルギー疾患の罹患率は増加しており、その対策は重要な課題である。本研究では、アレルギー疾患に関わる生理活性脂質であるロイコトリエンの合成系に注目した。ロイコトリエンの合成系の酵素である5-リポキシゲナーゼを阻害できる機能性食品成分を同定し、その成分の抗アレルギー作用を明らかにすることで、食品によるアレルギー疾患の予防と食品の新しい活用法の開発の実現を目指すことを目的とした。 昨年度までの研究において、香辛料の1つであるナツメグに比較的強い5-リポキシゲナーゼ阻害効果を認め、その阻害成分の構造についても明らかにした。さらにナツメグ抽出物およびそれに含まれる阻害成分は、ラット好塩基球性白血病RBL-2H3細胞の5-リポキシゲナーゼ活性も抑制した。今年度は、この阻害成分をナツメグから効率的に抽出、精製する方法を検討した。ナツメグを各種溶媒にて抽出し、各抽出液に含まれる本阻害成分を逆相HPLCにて分析した。その結果、本阻害成分は、水や30%エタノールといった溶媒では抽出されず、50%含水エタノールや80%含水エタノール、エタノール、酢酸エチルといった溶媒で抽出されることが分かった。そこで、これらの溶媒を組み合わせた抽出方法で粗精製し、最終的には分取用カラムを用いた逆相HPLCにて阻害成分を得た。今後は、更なる研究により、アレルギー疾患のモデル動物を用いて、本阻害成分の有効性の解明を進めていく必要がある。
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