研究課題/領域番号 |
26750051
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研究機関 | 県立広島大学 |
研究代表者 |
西田 由香 県立広島大学, 人間文化学部, 准教授 (40435053)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 時間栄養学 / 摂食パターン / 時計遺伝子 / 概日リズム / 食習慣 / 脂質代謝 / 摂食時刻 |
研究実績の概要 |
摂食パターンと栄養代謝リズムの関連を調べるため,ラットによる基礎研究を実施した。近年増加している夜食(遅い夕食)と朝食欠食(遅い朝食)に着目し,摂食パターンが肝臓の時計遺伝子や脂質代謝関連遺伝子の発現リズムにどのような影響を与えるかを検討した。 肝臓におけるBmal1やPparα,Cpt1の遺伝子発現は,活動期最初の食餌を4時間遅らせると明暗サイクルではなく摂食サイクルに応答した4時間遅れの日内リズムを呈した。活動期最後の食餌を4時間遅らせても,活動期最初の摂食時刻が同じであれば発現リズムに変化は認められなかった。このことから,肝臓における遺伝子発現リズムのリセットには,夕食よりも朝食時刻が重要であると考えられる。 一方,遅い朝食や遅い夕食習慣により,脂肪酸合成酵素Fasn遺伝子の発現量増加とピーク時刻の変化が認められた。これは,活動時間帯と摂食サイクルの乱れを予知し,朝食や夕食時刻の遅れに備えて脂質合成系が促進した可能性を示している。しかし今回の結果では,体重や内臓脂肪量,糖・脂質代謝指標に摂食パターンの違いによる差は認められず,活動期に規則正しく3回摂取したコントロール群でさえも,血中および肝臓の脂質代謝指標が高値を示した。1日3回の食餌組成が高脂肪・高砂糖食であったことが要因と考えられ,たとえ規則正しい摂食時刻であっても食餌内容が悪ければ,肥満や脂質異常を誘発することを示している。 今回,摂食パターンは肝臓の遺伝子発現量や日内リズムに影響を及ぼすことから,特に朝食を起点とした規則正しい食習慣の重要性が示唆された。また,摂食時刻やタイミングといった摂食パターンと併せて,食事内容や量の管理が基本であることも浮き彫りとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
食習慣の課題を時間栄養学の観点から検討する際は,モデル動物(ラット)の実験条件設定が重要である。今回,朝食欠食や夜食習慣など多様な摂食パターンを確立し,基礎データを収集することができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,食餌の量や質,摂食パターン(時間帯)を多様化させた動物実験を計画する。特に,砂糖や脂肪など過食による悪影響が生じやすい食品・栄養素に着目し,摂食時刻の違いによる糖尿病や脂肪肝など生活習慣病の発症リスクへの影響について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験用品や消耗品について,在庫品を中心に計画的かつ効率的に使用した。
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次年度使用額の使用計画 |
所属異動に伴い,平成27年度以降は実験用品や備品等の整備に多額の費用を要する予定である。
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