食塩の過剰摂取は高血圧や腎・心疾患リスクを高めることから,生体に余分な食塩は速やかに尿排泄されることが望ましい。適度な減塩と昇圧抑制成分を考慮した栄養バランスが推奨される一方で,腎臓におけるナトリウム再吸収を促すアルドステロンには日内リズムが存在することが知られている。そこで,時間栄養学の視点から高塩食の摂取時刻と栄養組成の違いによるナトリウムの尿排泄リズムへの影響を明らかにすることを目的とした。 今回の高塩食には市販カップ麺を用いた。カップ麺は,1個でほぼ1日分に相当する食塩を含むだけでなく,高脂肪かつ低タンパク質,低カリウム,低食物繊維など栄養面の課題が多い加工食品である。このカップ麺食(食塩9.1g/食)を健康な成人女性7名を対象に,朝食,昼食,夕食のいずれかで摂取するクロスオーバー試験を実施した。カップ麺食の影響を明確に調べるために,1食前および次の2食は栄養バランスの整った低塩食(1.7g/食)を提供し,エネルギー量は高塩食,低塩食ともに620kcal/食で統一した。採尿は,食後2~3時間(夜間7時間)間隔で食後24時間まで行い,尿中ナトリウム,カリウム排泄量を測定した。 ナトリウムの尿排泄は,カップ麺の摂取時刻や食後の経過時間に関係なく,夜23時頃にピーク,早朝に最も低い,血中アルドステロンに応答した日内リズムを示した。しかし,どの時間帯にカップ麺を摂取しても食後5時間で尿排泄されたナトリウムは摂取量の20%程度と低く,摂取時刻の違いによる差はなかった。カップ麺で摂取した食塩は食後の尿排泄が遅く,体内に貯留しやすいことが明らかとなった。一方,カリウムの尿排泄はカップ麺の摂取時刻やナトリウム尿排泄に関係なく,朝方低く,昼間に増加する典型的な日内リズムを呈した。今後は,食塩と他の栄養素の組み合わせや摂取タイミングとの関係を明らかにする必要がある。
|