抗がん剤がもたらす生体へのダメージは多大であり、免疫機能の維持・向上が治療の効果を高めるには不可欠である。しかしながら、がん治療と免疫低下に関する研究では、獲得免疫に関する研究が多くを占め、最も重要と考えられる患者自身に本来備わる自然免疫(=腸管免疫)の影響については検討されていない。また、免疫賦活を期待し治療と併用してサプリメントを使用するケースが増えているが、輸送担体を含めたリスク評価に関しては生体機能への影響を考慮して評価している報告は少ない。本研究では、抗がん剤によって誘導される腸管免疫低下と栄養輸送トランスポーターの関連について基礎的検討を行い、腸管機能を総合的に評価するシステムを構築することを目的とした。 当該年度においては、抗がん剤投与後24時間の小腸を取り出し、α-defensin発現への影響を確認した。その結果、腸管免疫の指標であるα-defensinの発現は減少傾向を示すことが明らかとなった。また、前年度までの検討で明らかとなったin vitroにおける抗がん剤曝露がα-defensinの発現に及ぼす影響と相関する結果となった。
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