研究課題/領域番号 |
26750055
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研究機関 | 東京農業大学 |
研究代表者 |
多田 由紀 東京農業大学, 応用生物科学部, 助教 (80503432)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 女性 / 自律神経活動 / 食事 / 睡眠 |
研究実績の概要 |
夕食のエネルギー量の違いが夜間睡眠状況に及ぼす影響を、卵巣ホルモン濃度の影響を考慮したうえで検討することを目的としたランダム化比較試験を行った。 女子大学生24名を無作為に就寝前のエネルギー摂取割合が高い群(HNI群)と低い群(LNI群)に振り分け,夜間睡眠状況,血液性状を測定した。実験食は両群ともに朝・昼・夕食を提供し,測定当日の3食のエネルギー割合は,HNI群が1:1:2,LNI群が1:2:1とし,両群の1日の総エネルギー摂取量は等価とした。夕食摂取前に心拍計を装着し,指定施設で23時に就寝し、翌朝採血を行った。心電図R-R間隔をもとに心拍変動の周波数解析を行い,総スペクトル密度(TP),低周波数成分(LF),高周波数成分(HF)を求め,TPに占めるHFの割合(%HF)を副交感神経活動指標,LF/HFを交感神経活動指標として用いた。これらの指標は睡眠開始時刻から3時間および全睡眠時間における平均値を算出した。また,対象者を卵胞期に測定した者と黄体期測定した者に分類した層別解析を行った。 その結果、入眠後3時間の%HFはHNI群がLNI群と比較して有意に低値を示し,LF/HFはHNI群がLNI群と比較して有意に高値を示した。総睡眠時間ではHNI群の%HFがLNI群と比較して有意に低値を示した。層別解析では,黄体期に測定した者における入眠後3時間および総睡眠時間の%HFは、HNI群がLNI群と比較して有意に低値を示したが、卵胞期に測定した者においてはHNI群とLNI群の%HFに有意差がみられなかった。 すなわち、一日の総エネルギー摂取量に占める夕食のエネルギー割合が高い食事は低い食事に比べて,睡眠中の交感神経活動の低下および副交感神経活動の上昇を抑制することが示された。さらにこの関連は,特に黄体期において顕著である可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に卵胞期と黄体期における夜間の睡眠状況および食事の変動について観察研究を行い、黄体期に睡眠の質が下がる可能性および就寝前の間食が睡眠状況に影響する可能性が示された。2年目は初年度の成果をもとに仮説を設定し、就寝前のエネルギー摂取量が夜間睡眠状況に与える短期的な影響をランダム化比較試験により明らかにした。いずれも当初計画通りの進展状況である。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度の介入研究では、黄体期に測定した者の方が、卵胞期に測定した者と比べて、夕食のエネルギー割合が高いことによって副交感神経活動が抑制されやすいことが示唆されたが、同一の対象者の卵胞期と黄体期の比較や、月経周期内で連続した調査はされていない。さらに、食事をコントロールした上で、月経周期に伴う女性ホルモンの分泌量と睡眠中の自律神経の変動を同時に調査した研究は不足している。そこで、睡眠時自律神経活動および、女性ホルモン分泌量を非侵襲的に測定し、月経周期に伴う変動を明らかにする。 同一対象者で、一月経周期間、唾液中の女性ホルモン(エストラジオールとプロゲステロン)の濃度と夜間睡眠時自律神経活動および睡眠状況を測定し、その変動の関連を調査する。具体的には、毎朝の基礎体温計測と月経開始3日目以降毎朝の唾液採取を行う。また、卵胞中期からは起床直後の尿を使った排卵日検査を約7日間行う。さらに、月経期、卵胞前期に各1回、卵胞中期~排卵まで3~5回、黄体前・中・後期に各1回、合計8~10回、日中の身体活動計測および夜間睡眠時自律神経活動の計測を行う。このとき夕食は規定食を提供し、さらに朝、昼、間食も含めた1日の食事調査を行う。唾液の分析は、Enzyme Immunoassay(EIA)法を用いて測定者が行う。統計解析は、IBM SPSS statistics ver.23を用い、線形混合モデルを用いて月経周期に伴う女性ホルモンの分泌量および夜間睡眠時自律神経活動の変動の関連を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度に長時間心電図記録機を購入する予定であったが、大学の研究室配分予算から購入することができたため、研究費の使用額が減少した。
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次年度使用額の使用計画 |
28年度に使用する唾液中の卵巣ホルモン濃度測定キットが高額であるため、余剰分を購入費に充てる。
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