初年度の研究結果を受け、女性ホルモンの分泌量と夜間睡眠時自律神経活動の変動を一月経周期にわたって測定し、食事、睡眠、身体活動を考慮した上で関連を検討した。 月経周期の安定した女子大学生を対象とし、一月経周期にわたって、唾液採取を毎日、夜間睡眠時心拍変動、睡眠状況、食事記録、身体活動量を9~14日測定した。夜間睡眠時心拍変動測定日には、夕食に規定食を提供し、摂取時間帯も指定した。測定期間中は毎日25時までに就寝し、5時間以上の睡眠を取ることを依頼した。唾液中女性ホルモン濃度(エストラジオール、プロゲステロン)はEnzyme Immunoassay(EIA)法を用いて測定し、5日間の移動平均を用いた。夜間睡眠時心拍変動のデータから心拍数、R波とR波の間隔の標準偏差(RRSD)を求めた。解析には卵胞期および黄体中期の各期の平均値を用いた。統計処理にはIBM SPSS Statistics ver.23を用い、統計的有意水準を5%とした。各指標の卵胞期と黄体中期の比較は対応のあるt検定またはWilcoxonの符号付き順位和検定を行った。 その結果、エストラジオールおよびプロゲステロンともに卵胞期に比べて黄体中期で有意に高値を示した。夜間睡眠時のRRSDは卵胞期に比べて黄体中期で有意に低値を示し、心拍数は有意に高値を示した。卵胞期と黄体中期の変化量において、プロゲステロンと心拍数は正の相関を示し、RRSDは負の相関を示した。エストラジオールとプロゲステロンの交互作用と心拍数は正の相関を示し、RRSDは負の相関を示した。すなわち、食事や睡眠の月経周期に伴う変動とは独立して、夜間睡眠時の自律神経活動指標は女性ホルモンと関連して変動することが示された。
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