研究課題
これまでの研究で明らかとなっている大豆イソフラボン4種のうち最も乳癌増殖抑制効果の強いGenistein (Gen) と他の大豆イソフラボンであるDaidzein、Glycitin、Equol (Eq)との併用による相乗効果を乳癌細胞サブタイプ別に検討した。①併用添加により全てのサブタイプの乳癌細胞において増殖抑制の相乗効果が示された。中でも、②エストロゲン受容体陽性のMCF-7において併用効果の感受性が最も高く示された。さらに、③最も強い相乗効果が示された組み合わせはGenとEqの併用であった。併用による細胞増殖抑制機序の成分による作用の差、サブタイプによる感受性の差を解明するために細胞周期およびアポトーシス解析を行った。④細胞周期に関しては、成分およびサブタイプによる有意な差は見られなかった。しかしながら、⑤アポトーシス誘導に関しては、細胞増殖抑制の相乗効果が最も強かったMCF-7へのGen+Eqの併用添加において顕著に有意な増加を示した。よって、併用による乳癌細胞増殖抑制効果はアポトーシス誘導が大きな要因であることが示唆された。そこで、MCF-7におけるGenおよびEqの作用機序を単独添加と併用添加を比較検討し詳細な機序解析をおこなった。⑥Gen+Eqの併用では、GenあるいはEq単独添加と比較して、それぞれ約30%および75%増殖を有意に抑制した。さらに、⑦アポトーシスを示すsub-G1分画が3倍に増加し、同時に⑧DNAの断片化を示すcleaved PARPの顕著な増加がみられた。さらに⑦アポトーシスを抑制するAkt-mTOR経路の活性が低下し、⑧抗アポトーシス蛋白であるBcl-xLの減少、⑨アポトーシス誘導蛋白のBaxが増加した。本研究によりGenとEqの併用添加はエストロゲン受容体陽性乳癌細胞に対して強力にアポトーシスを誘導することが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、大豆イソフラボン構成成分の予防機序を明らかにするために、ヒト乳癌細胞株を用いて、単独あるいは併用添加による分子機序を解析するとともに、乳癌発症モデル動物で検証することにより、乳癌発症予防機序を明確にし、臨床応用へ発展させることが目的である。平成26年度は大豆イソフラボン成分は併用添加することによりあらゆるサブタイプの乳癌細胞に対して相乗的な増殖抑制効果を示すこと、さらに、併用効果が最も高い組み合わせはGenとEqの併用であり、特にエストロゲン受容体陽性乳癌細胞への感受性が高いことを解明し、さらにGENとEQの併用による乳癌細胞増殖抑制に寄与する主要な分子機序を明らかにするところまで達成している。
今後はGenとEqの併用効果のより詳細な分子機序の解析を継続するとともに、生体レベルで実証するために、ヌードマウスを用いた抗腫瘍効果の検討、エチルメタンスルホン酸(EMS)誘発性乳癌モデルラットによる乳癌予防効果の検討を行う。
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