研究課題/領域番号 |
26750060
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研究機関 | 長崎県立大学 |
研究代表者 |
石見 百江 長崎県立大学, 看護栄養学部, 講師 (90413228)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 郷土 / 幼児 / 食教育プログラム |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、豊かな味覚や日本の「食」が失われる危機にある現代社会において、子どもたちの健全育成推進のために郷土に根付いた幼児の食教育プログラムの開発と評価方法を明らかにすることである。これまでに保育園や幼稚園においてさまざまな食教育活動の実施をし、保護者の意識変容や一定の教育効果を確認した。一方で、幼児の「心情・意欲・態度」に配慮した質的評価が不十分で、次のステップに進むための目標設定や効果判定が難しい状況だった。そこで、幼児教育の専門職や管理栄養士による幼児や保護者とのかかわり方を精査し、地域文化を含めた環境、保護者がおかれている現状と子どもへの影響・課題を調査・解析した。平成27度は平成26年度の調査に引き続き、北海道,岐阜県,長崎県の保育園で調査を実施した。内容は幼児教育専門職に対するインタビュー調査と保護者への食生活状況・地域文化や郷土食に関する家庭でのコミュニケーション方法の調査をした。その結果、幼児教育施設では様々な食教育が展開されており、評価システムの構築が不十分との課題が明らかになった。そこで一部の教育活動をエピソード記録などを用いて評価した。保護者の意識については、幼児期の地域に根づいた食教育は約80%が「必要」と回答した。適切な方法として「保育園や学校の教育」、「家庭での伝承」、「地域の方の指導」の順で高かった。一方、家庭では、「保護者が地域文化や郷土の料理について子どもと話すことがない」との回答が約75%と高かった。その理由は「自分自身が地域に根づいた食文化や郷土の食を知らない」の回答が半数以上で最も多かった。多くの保護者が「郷土料理をしらない」と回答していることから,幼児が家庭外で得た知識や関心を実生活で展開できない可能性が示唆された。地域や文化に根づいた食,地域の食について保護者に興味を持ってもらえるような双方向教育が幼児教育に必要と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では「子どもの育ちと気づき」に関するデータを蓄積し、子どもへのかかわり方を工夫することで、食習慣の自立支援や実態に即した子育て支援「心と体が健康でたくましく生きる子の育成」に繋がると考え、以下の3点を重要視して研究を進めてきた(①地域に根ざした郷土食教育プログラム開発②「家族やその地域の文化」に着目した調査および解析③評価システムの構築)。この中で、②のデータ解析はほぼ終了した。2年目に①の食教育プログラムの実践ができた。その内容は保護者と幼児が楽しみながら食教育に参加する給食参観プログラムの実施(年2回)だった。幼児教育の専門職・保護者の観点から、「めざす子ども像」に近づいているかを判定し、両者間に評価指標のずれが生じていないかを検証した。モデル的に実施したものの、同じ食教育プログラムを実施できていない園があるので、今後は、プログラム実施機会を増やすこととその検証が課題となる。このような進捗状況を考慮し、おおむね順調に進展していると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度になるが、異なる地域で地域に根ざした郷土食教育プログラムの実施する場合の変更可能な点と評価ポイントを明らかにしてより良いプログラムの標準化を目指す。また、自園給食を実施している広島県の幼児教育施設で研究協力が得られる可能性が高いので、これまでに実施した食教育プログラムの実施と評価方法の提案をする予定である。これまでに研究協力をいただき、教育プログラム実施をした保育園・幼稚園に対して報告書を作成し、その内容を報告会で発表する。幼児の食教育にかかわる多くの職種の方に対して情報公開をするために学会発表を予定しており、論文作成と投稿を目指す。また、研究により明らかとなった内容は、HP上で公開する。
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次年度使用額が生じた理由 |
栄養教育プログラムを実施する予定の2箇所が実施できなかったため、使用した旅費が予定より少なかった。研究内容は変更せず、最終年度に実施したい。また、全体のデータ集計の取りまとめのアルバイト謝金などは次年度使用する為、今年度その謝金に余りが生じた。次年度の作成となるいくつかの論文投稿、学会発表、報告会の実施が本年度実施できず、そのための費用がまだ使用できていない状況のため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度実施予定の栄養教育プログラムは次年度に実施・評価するので旅費は使用する。成果報告に関する報告書や論文作成などが最終年に重なるが、スケジュールには問題なく、使用のめどは立っている。謝金等や報告会実施のための会議費などを次年度に使う予定である。
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