研究課題/領域番号 |
26750061
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研究機関 | 長岡工業高等専門学校 |
研究代表者 |
奥村 寿子 長岡工業高等専門学校, 物質工学科, 准教授 (20600018)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 高アミロース米 / 湿熱処理 / 抗酸化能 / 玄米 |
研究実績の概要 |
本研究では、高アミロース玄米を用いた低グリセミックインデックスの米加工食品の開発にあたり、水蒸気を利用した「湿熱処理」加工が、玄米の糠層および胚芽に含まれている機能性成分の量、分布、生理的機能性に与える影響を明らかにする。湿熱処理は、米の胚乳部分のデンプンを難消化性に改質し、消化・吸収速度を遅延させるための安全な加工法であるが、玄米の有する機能性成分をより有効に活用し、国民の健康維持、米消費量の増加にも有益な玄米加工食品を実用化するために、湿熱処理による糠中成分の変動も把握し、精米、保存、調理も含めた最適条件を確立する。 26年度は、米の糠層、および胚芽中の機能性成分に着目し、湿熱処理および精米後の可食部に残存する成分量と抗酸化能について検討した結果から、使用する高アミロース米品種を“越のかおり”に決定した。また、湿熱処理後に精米することにより、in vitroの方法で測定される抗酸化能が、未処理のまま精米される場合よりも高いことが明らかとなった。そこで27年度は、その抗酸化能の向上に寄与している成分を化合物レベルで明らかにするため、越のかおりについて、湿熱処理による各成分量の変化をLC分析により詳しく調査した。その結果、玄米からは抗酸化能を示す成分としてp-ヒドロキシ安息香酸、フェルラ酸、p-クマル酸、バニリン酸、プロトカテク酸、クロロゲン酸、カフェ酸、シリンガ酸、シナピン酸の9種類のフェノール性化合物が検出されたが、湿熱処理後に精米した白米では、p-クマル酸、p-ヒドロキシ安息香酸、フェルラ酸の3成分が未処理のまま精米した場合に比べて顕著に増加し、各成分量の合計も蒸気圧力に依存して増加した。したがって、26年度に得られたin vitroでの抗酸化能向上の結果が裏付けられ、湿熱処理による精白米の抗酸化能の上昇には、これらの成分が胚乳に移行している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
湿熱処理条件(温度、水蒸気圧力、水分量、時間、乾燥)による各測定試料のin vitro 試験(食物繊維量、難消化性デンプン量、人工消化試験、各種抗酸化試験)および、糠層、胚芽中の機能性成分(フェノール性化合物)の定量は完了したものの、水溶性ビタミンの定量に関して安定した結果が得られず、LC装置を使用した分析に時間を要したため、同装置を使用する糖・脂質代謝、腸内環境への影響、血中脂肪酸のLC-MS/MS分析が終了していない状況である。
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今後の研究の推進方策 |
玄米中の水溶性ビタミンの定量には既に多くの時間を費やしているが、現時点では再現性の良いデータを得ることが困難であるため、先に他の機能性成分として、脂溶性のビタミンEやγ-オリザノール、フィチン酸、アミノ酸についての測定を行い、既に得られている機能性成分等の結果とあわせて、最適な湿熱処理条件を決定する。また、保存状態による成分量変動と生理的機能性への影響を調べ、食品加工および加熱調理にともなう吸水量改善、成分量変化と損失を確認し、食味評価も併せて、湿熱処理玄米のより良い調理法を検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
27年度に完了する予定であった水溶性ビタミンの定量において安定した結果が得られず、LC装置の使用に多くの時間を要したため、同装置を使用して次に実施する予定であった糖・脂質、血中脂肪酸のLC-MS/MS 分析が終了せず、それに関連した消耗品等の予算が次年度使用額として生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、先に脂溶性のビタミンEやγ-オリザノール等の測定を行い、その後、水溶性ビタミンの定量を行う予定で、計画に一部変更はあるが、その他の保存状態による成分量変動と生理的機能性の調査、食品加工および加熱調理にともなう吸水量、成分量の確認、食味評価については計画通り実施し、予算についても計画に沿って使用する。
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