本研究では、高アミロース米と湿熱処理を用いた食後の血糖値上昇を緩やかに抑制できる米加工食品の開発にあたり、水蒸気を使用した湿熱処理が玄米の糠層および胚芽に含まれている機能性成分の量、分布、生理的機能性に与える影響を明らかにすることを目的とした。平成28年度は、玄米の糠層に含まれている脂溶性ビタミン類(α、β、γ-トコフェロール)およびγ-オリザノールについて、湿熱処理を行うことによりその成分量が玄米中でどのように変化するのか、また湿熱処理後に精米を行った場合、どの程度の成分が胚乳部へ移行しているのかについて調べた。3品種の玄米について水蒸気圧0.1~0.3 MPa、5分または10分間の条件で検討した結果、湿熱処理した玄米については、各成分量が未処理の玄米と比較してほぼ同じ、あるいは減少する結果となり、条件に依存した一定の傾向はみられなかったが、処理後に精米した白米は未処理の白米と比較して成分量が多く、γ-オリザノールについては最大で2倍程度、各トコフェロールについても変化は小さかったが0.2 MPa、5分または10分間の処理後に最も大きく増加する結果が得られた。いずれの成分についても処理条件(圧力、時間)の強さに依存して増加する傾向が見られ、前年度までに測定したポリフェノール量と同様の変化を示した。以上より、玄米に対する湿熱処理においては、糠層に含まれている脂溶性ビタミン類、ポリフェノールが胚乳へ移行することが示唆された。また、湿熱処理の最大のメリットである難消化性デンプン量と食物繊維量の増加について、越のかおり玄米では、最も強い条件の0.3 MPa、10分間の処理により1.5倍程度増加することが分かった。一方、吸水性とデンプン糊化度の割合も処理条件の強さに依存して上昇することが分かり、食品としての加工にあたっては、0.2 MPa、5~10分間の処理が望ましいと考察した。
|