研究課題/領域番号 |
26750070
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研究機関 | 京都文教大学 |
研究代表者 |
大前 暁政 京都文教大学, 臨床心理学部, 准教授 (90709528)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 探究学習モデル開発 / 探究学習教材開発 / 自律学習 / 科学的思考力 / 科学的表現力 / 小学校理科授業 / 能動的学習 |
研究実績の概要 |
理科における探究学習は,主に中学校と高等学校で行われており,基礎基本の習得に力を注ぐ小学校段階ではほとんど行われておらず,小学生が主体となって行う「自律型」の探究学習に関する知見は皆無である。本研究を行う意義として,小学校における質の高い理科探究学習の保障と,科学的思考力・表現力の向上,中学校以降の理科探究学習への連結と推進がある。研究の第二段階として,「小学校における自律型探究学習の実践と結果分析」を行いつつ,「自律型探究学習に適した教材の開発」を行い,教材の改良を図った。研究の第一段階で行ってきた「小学校における自律型探究学習を成立させる学習条件と教材条件の解明」と「自律型探究学習モデルと,自律型探究学習に適した教材の開発」をもとにして,自律型探究学習モデルと教材を活用し,複数の小学校現場において実際の授業の中で効果を確かめてきた。特に,科学的な思考力や表現力の向上について,パフォーマンス評価を中心に解析を行い,従来の実践と比べての効果を検証した。研究を進めていく過程で,思考力・判断力・表現力等の中で,特に活用の力や,探究を進める力の向上を図ることや,主体的な問題解決や能動的な学習を促すことが重要であることが明らかとなり,第一段階で作成したモデルや教材に改良を加え,自分で疑問を見つけるための工夫や,問題解決を行うための工夫を取り入れることを試みた。特に教材に関しては,児童自身が発見した問題を自由に確かめることができるものを用意するという工夫を取り入れるようにした。また,自律型探究学習モデルの探究過程の中で,習得と活用と探究をつなぐような教師の働きかけを取り入れ,児童が無理なく探究できるようにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「小学校における自律型探究学習の実践と結果分析」を行い,また,実践を通す中で必要に応じて,「自律型探究学習に適した教材の開発」を行い,教材の改良を図ることができた。平成26年度中に開発した自律型探究学習モデルを,平成27年度の早期から,複数の単元において研究協力小学校で授業実践し,子どもの変容を調査することができた。実践の結果をもとにして,科学的な思考力や表現力の向上について,思考力や表現力を測定するための指標をもとにしたパフォーマンス評価を中心に解析を行い,従来の実践と比べての学習モデルの効果を検証した。実践結果から,自律型探究学習モデルを,より現場の授業に適した形に改善し,自分で疑問を見つけるための工夫や,問題解決を行うための工夫を取り入れるようにした。3年理科「磁石のはたらき」や4年理科「物の温まり方」,5年理科「電流の働き」などの単元で実践やモデルの構想を現場の理科主任と協同で行い,特に活用の力や,探究を進める力の向上を図ることや,主体的な問題解決や能動的な学習を促すことが重要であることが明らかとなったため,来年度のさらなる実践に向けて,単元全体における探究学習の構想を行うことができた。また,学年の発達段階や学習方法の習得程度も加味したモデルにするため,教師の働きかけを取り入れたモデルの構想を図ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究のまとめとして,小学校における実践の評価と自律型探究学習モデルの構築を行う。具体的には,小学校における実践の最終分析と総合考察を行い,最終的な学習モデルを構築する。平成27年度中に実施した,自律型探究学習モデルの実践データをもとに,学習モデルと教材の効果について,最終的な検証・評価を行い,学習モデルの修正を図るようにする。また,よりよいモデルを構築するべく,必要に応じて,さらに他の小学校において実践を行うことで最終の検証を行う。最終的に構築した自律型探究学習モデルを使って,必要に応じてさらに他の小学校現場での実践を通し,効果の検証を行う。モデルの修正が必要な場合には,改訂を行うようにする。特に,未実施の単元においてモデルを取り入れて実践を行うことで,効果の検証を図っていく予定である。なお,自律型探究学習モデルに取り入れる教材について,さらに改良を加える必要が生じた場合には,適宜教材の開発を行うようにする。理論構築のための研究だけでなく,小学校現場での実践に重きを置いているため,実践や研究協議に時間を費やす恐れがあるが,授業協力・補助や調査補助に関して,研究協力者(各年度3~5名)に依頼し,申請者の学習モデル・教材開発や,結果の分析,理論化に費やす時間をより多く確保する。
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