本研究では,気温や湿度といった使用環境やユーザーの使い方,長期使用に夜部品等の劣化などの様々な要因に影響されず安定した機能を発揮するような製品を設計するための考え方をロバスト設計と呼ぶ。本研究は,学生や若手技術者を対象としてロバスト設計の効果的な教育手段を開発することを目的としている。 前年度までに,アクティブラーニング形式の事前教育手順の構築,回路シミュレーションによるロバスト設計手段の構築,さらには統計計算を行うための計算システムの開発が完了し,それぞれの実施事項に対して学生に対しての実際の教育を実施した。また,H28年度は膨大な実験回数を要する回路シミュレーションの自動化を完了するとともに,実際の回路製作を含めた実習手順の構築を行い,実際に学生に対しての教育を実施して効果の検証を行った。なお,当初,実際の回路製作でロバスト設計の実習を行う可能性も検討したが,作業手順が膨大になり教育効果が低下することが確認されたたため,最終的には,ブレッドボードによる回路設計と電気特性の測定を行うことで,現実のばらつき状況を確認させることに注力した。実際に学生に対する教育を実施した結果より,具体的な回路製作と測定を行うことでシミュレーション実験のためのパラメータ設定をスムーズに行えるようになることが示唆された。 本研究の全期間を通じ,電気系の学生に対するロバスト設計教育のためには,十分なディスカッションを通じてロバスト設計の必要性を認識させた上で,回路シミュレーションによる実習を複数回繰り返す経験を与えることが有効であることが確認された。また,シミュレーションによる実習の前段階として,実際の回路製作と電気特性の測定も実習に取り入れることが有効であることが確認された。本研究によって実務経験のない学生や若手技術者に対して比較的短期間で実施できるロバスト設計教育を構築することができた。
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