近年新たな入力装置として期待されている脳波を利用し,小中学生の工学への興味・関心向上のための体感型教材の開発および,高専制御系科目(特に,システム制御や制御情報など)で利用可能な,制御学習教材(脳波計測,脳波認識,外部制御アプリケーション)の開発を行うものである.その中で,脳波を計測するには,容易に計測が可能なヘッドセットタイプの脳波計測器を使用することで,脳波に対するハードルを可能な限り下げて,楽しく触れることを目指している. 平成28年度は,昨年度に引き続き簡易脳波計としてNeuroSky社のMindWave Mobile(以下,脳波計)を用いた脳波による機器制御システムの開発を進めた.小中学生向けシステムでは出力先をタブレット端末だけではなく,ボール型ロボットへの制御を検討した.ゲーム性を高めるために2人対戦として,各々に装着した脳波計から脳波を読み取り,その集中(またはリラックス)度の高い方へ,ボール型ロボットを動かすシステムを開発した.地元自治体主催のイベントで本システムを提示したところ,小中学生が楽しくも真剣に取り組む様子を見ることができた.また,そのアンケート調査では「興味を持った」,「科学へのイメージが変わった」,「仕組みを知りたい」といった回答が回答者の約8割から得られた.その様子は地元新聞紙にも取り上げられたことからも本研究の有用性は示されたと考える. 高専生向け教材としては,C言語の学習,脳波の周波数解析処理,機械学習の基礎,マイコンボード(Raspberry Pi3)の設定,そして,外部機器制御への応用という一連の講義項目が完成し,平成29年度の講義で実施するための準備が整った.平成29年度は実際に担当科目において,本教材を使用して講義を行う.年度末の授業アンケートを行い,講義を受けた学生からのフィードバックを今後の研究に活かしたい.
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