本研究は、研究現場の可視化技術・成果を活用した展示物の開発と評価を通して、生物機能や生態の理解に必要なミクロの視点を効果的に扱う「ミクロスケール展示」の展示デザインモデルを提案するものである。本研究はミクロスケール展示に関する既存展示調査と、展示開発・評価の2つの流れで実施した。国内外ミクロスケール展示の現状、及び実際の展示開発より抽出される研究現場と博物館展示制作者の恊働に必要な要素を合わせて考察し、分かりやすく教育効果の高い情報発信を行うための知見を研究者・展示制作者に還元することを目指している。 平成29年度研究実績の概要は次の通りである。 第1に、国内外の既存展示調査を全て完了した。開発プロセスが確認できた調査結果を取り上げ、微小な生物の生態やマイクロハビタットの映像化について整理することができた。さらに撮影・編集・投影システム設計に関して、それぞれ留意点を指摘した。本結果は応用生態工学誌において論文として発表した。第2に、展示開発・評価について、平成28年度に続き学校現場において利用評価を実施した。調査コンテンツには、初年度に専門機関と連携して開発したウニの小器官を扱うインタラクティブ映像展示(第1回開発展示)を用いた。第1回開発展示の開発プロセス、展示評価、および研究期間中に開発した2つのコンテンツの利用実践について、それぞれ学会にて発表した。最後に、これまでに得られた成果の総合考察より、ミクロスケール題材を用いた展示デザインに関する報告書の取りまとめを行った。
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