研究課題/領域番号 |
26750075
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
森 一将 東京大学, 教養学部, 講師 (10616345)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 教授学習支援システム / 項目バンク / 項目反応理論 / 推定値順序保存 / ファカルティ・ディベロップメント支援 |
研究実績の概要 |
本研究では、項目反応理論(IRT)に基づく、統計的専門知識のない実務家が使いやすいe-テストシステムを開発する。2014年度においては、2つのサブテーマについて理論的研究を行った。 1つ目は多値型IRTの項目母数順序性成立条件の導出である。このサブテーマでは、多値IRTにおいて事前の予想以上に多くのモデルで項目母数の順序性が成立することが示された。この結果を導出するために、「近似尤度」と呼ばれる簡易な関数を推定に用いた。この近似尤度が成立する条件範囲をシミュレーション研究により明らかにした。その結果、一般的な母数(学力や問題の難易度)設定の下では、典型的な学力テストの項目数、配点基準の範囲では、近似尤度が適切に働き、多値IRTの項目母数の順序保存が成立することが明らかになった。このことより、期末試験などの大学(高校)現場において、この項目母数順序性に基づく簡易型項目バンクを構築することは適切であると判断する。このサブテーマに関しては、初期的な結果を国際学会等で発表済みである。また、事前課題としてより単純な2値型IRTについても順序保存を検討した。その結果はすでに論文化され、Scientia Mathematica Japonica誌に掲載された。 2つ目は項目母数順序を用いた正答率の予測法を検討した。このサブテーマについては事前の計画を変更した。具体的には、前述の近似尤度により簡易的な予測量を導出し、これを基に正答率の予測を行うことにした。現時点では予測量の導出は終了し、この予測量に関する最適性を調べているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2014年度においては、本研究の主要な理論的課題であった多値型IRTの項目母数順序性成立を事前の予想以上の数のモデルに対して示すことができた。これは、近似尤度の提案によるものが大きい。また、数学分野の先行研究において基礎的結果が見つかったため、この近似尤度に関する誤差評価が理論的に行えたため、その後のシミュレーション研究での範囲をより現実的なものにすることができた。 項目母数順序を用いた正答率の予測法については予測法の変更をしたため、若干遅れがみられるが、すでに予測量の導出が終了したこと、及びそれ以降の作業は応用面の研究と並行して行えることから、対応できる範囲の遅れと考える。 以上より、研究はおおむね順調に進んでいると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今後は研究計画に示された通り、応用面の研究として「簡易型項目バンクの開発と類型化検証」「各項目正答率の事前予測機能の開発」「e-ラーニングシステムでのテストモジュールの開発と評価」を行っていく。これに関しては、筑波大学外国語センターの新谷講師の支援を受けながら、主に教養科目の英語をテーマに具体的な開発・検証作業を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初購入予定であったノートPCについて、4月以降に性能が高い新型が出るとの情報を得たため、4月以降に購入を延期した。
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次年度使用額の使用計画 |
4月中に速やかに当該PCを購入する。
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