研究課題/領域番号 |
26750079
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研究機関 | 北陸先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
田中 孝治 北陸先端科学技術大学院大学, 知識科学研究科, 助教 (60583672)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | メタ認知 / 経験学習 / TA / 高等教育 / 教育方法 / 授業設計 |
研究実績の概要 |
議論のファシリテーションを通じたメタ認知スキルの教育モデルを構築するために、提案する教育プログラムの学習目標と学習活動の関係を表す目標階層モデルとして明確に表現した。学習目標と学習活動の関係性の明示化の目的は、教員と学習支援者(TA)が教育プログラム構成理由を共有することで、(1) TAが「教える」ことの助けにする、(2)TAが「学び方を学ぶ」ことの助けにする、(3)各種教材の作成指針にすることであった。 平成26年度の4月~6月にかけて本教育プログラムを教育機関と連携のもと実施した。定量的・定性的な分析ではなく主観的な解釈の段階ではあるが、(1)(2)については、報告書やミーティングにおいて教え方・学び方の学びに関する記述・発言にメタ認知と経験学習に基づいた思考が背後にあると予想されるものが増加していることが見て取れた。(3)については、TAの指導に用いたガイドライン・報告書・経験共有会・学習シートの作成段階において、担当教員間の意識の共有度を高め、目的・手段の合理性を整える議論ができた。この結果については国内全国大会で口頭発表を行った。 教育プログラムの目的階層モデルを用いた議論の結果、デブリーフィングおよび教育プログラム全体を振り返る機会(成長自己報告)の必要性を認識し、これらを教育プログラムの一部として設定した。成長自己報告については、実施のコスト・効果の程度をはかるため、平成26年度は一部の学生に試行した。現在、この試行についてデータ分析中ではあるが、平成27年度の設計に反映できる手ごたえを感じている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
メタ認知を意識しながら議論に主体的に参加することでメタ認知的思考の重要性と困難性を認識した経験を持って、ファシリテーターTAとして議論に没入することなく議論を俯瞰するメタ認知的思考に専念することで、TAとなった学習者が研究リテラシーに必要なメタ認知的思考について考える動機づけを得ていることが、主観的な解釈の段階ではあるが見て取れた。本教育プログラムを実施するにあたって連携している教育機関からも洗練する価値のある教育プログラムであると判断していただき、継続して本教育プログラムを実施し、教育効果を実証的に検証する環境を整えることができた。
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今後の研究の推進方策 |
研究成果の発信が予定より若干遅れているため、精力的に学会誌や学会発表を通して研究成果を公表する。教育プログラムの設計と試行については、概ね順調に進展しているため、研究計画の通り、平成26年度の成果を踏まえつつ、教育プログラムの実証に取り組む計画である。この教育プログラムについて国内外の学会・研究会で発表する。これらと並行して、平成26年度作成した教育プログラムの目的階層モデルを基に,知識構築思考コンピテンシー学習目標オントロジー初期モデルを構築する。
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次年度使用額が生じた理由 |
教育プログラムの設計と試行については、概ね順調に進展しているため、収集したデータ(議論の様子や成長自己報告の録画データ)が大量にあり、データ整理に多くの時間を費やすこととなった。そのため、収集データの逐語録の作成等に遅れが生じており、平成26年度中の研究補助に対する謝金が不要となった。また、データ整理を優先し研究会等での発表を平成27年度に見送ったことから、次年度使用額が生じることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
収集データの整理に目途が立ち、分析対象のデータが明瞭になったことから、平成27年度は効率的に収集データ分析を実施することができる。その際には、平成26年度の収集データに加え、平成27年度の収集データ分の逐語録の作成等の実験補助業務の謝金が必要となるため、平成26年度の未使用額をそれにあてる計画である。また、平成26年度見送った研究成果発表を行うための国内外での学会・研究会に参加する旅費、論文投稿料に使用する。
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