初等中等教育段階におけるプログラミング教育の実現を目的として,教育用プログラミング実行環境「ますめ」を開発した.「ますめ」は,ビジュアル型プログラミングの経験はあるがテキスト型プログラミングの経験のない学習者を対象として,スムーズにテキスト型プログラミングによる学習を実現するものである.ビジュアル型プログラミング環境と表計算アプリケーションの融合を特徴として,対話的な実行や実行状態の可視化の実現,シンプルな言語仕様を備え,ブラウザ上で動作するウェブアプリケーションとして実装している. 高等学校における授業実践として,モデル化とシミュレーションを題材とした教材を開発し,「ますめ」を用いた授業を行った.この教材は,物体の運動に関するもので,速度や加速度によって位置が変化する等速運動や斜方投射,跳ね返りや物体の衝突判断などを,プログラムとして記述することで,そのシミュレーションを実行するものである.この教材を用いた授業を実施し,課題についての達成度を調査した.その結果,8割以上の生徒が「達成した」と回答し,生徒が提出したファイルからも,プログラミングができていることが確認された.また,「達成できなかった」理由としては,スペルミスや大文字小文字の間違いに最後まで気が付かない,初期値の設定忘れなどがあった.また,自由回答からは,課題について難しいと感じる生徒がいたものの,その半数が楽しかったとも回答しており,課題の難易度が高いことで学習意欲が低下したことはないと考えられる. このように,「ますめ」がビジュアル型プログラミング環境からテキスト型プログラミング環境へ移行させる段階において有効なプログラミング環境であることが確認された.本結果について,情報処理学会「コンピュータと教育」研究会や日本情報科教育学会で発表を行い,情報処理学会論文誌「コンピュータと教育」に論文を投稿中である.
|