端末間通信を実現し,2台以上の端末間で無機化学実験の進行状況を共有する手法を開発した.この実装により複数人の学習者がひとつの実験過程を共有し協調的な学習を実現できる.また複数台での利用において能力の低い端末を使う可能性を考慮し,カメラ機能の低い機種でも無機化学実験を実現できるよう,実験器具に対応する紙製マーカの視認性に関する検証を被験者実験を通じて行い,視認性の向上を行った.さらに実験環境の表示に用いる端末以外に,環境操作用の端末を導入した.従来の手法では実験器具や試薬など実際に存在するもの以外に,環境操作(初期化,ひとつ実験を戻す,試薬の投入量調整など)のためのマーカも存在していた.これらの環境操作機能を端末のみで操作できる機能を開発し,マーカを用いた操作では実際の実験操作との対応関係を高めた.また,端末からの環境操作においてタッチパネル特有のスワイプ,フリックなどのタッチ操作を導入し煩雑な操作の低下を実現し,実験環境に対応する端末を見たままでも環境操作用端末を操作できるよう,実験環境用端末のディスプレイへの環境操作状況の提示機能を実装した.なおこれらの機能実装では被験者実験を通じて適切な操作フィーリングとフィードバックを実装した. 実装した端末で当初想定していたことが実現できたかどうか評価実験を行った.評価実験では,提案システムのユーザビリティと学習への活用可能性を観点とした.ユーザビリティ評価ではハンドヘルド型インタフェースとしての学習環境とヘッドマウント型インタフェースとしての評価を行い,従来手法と同様のユーザビリティをスマートフォン・タブレット端末で実現できたことを確認した.学習評価実験として従来システムでの学習と同様のプロセスを提案システムでも行い,タブレット・スマートフォン機能を用いることで学習への有効性が低下せず,可搬性の高い環境を実現できたことを確認した.
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