研究課題/領域番号 |
26750088
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
高橋 徹 東京理科大学, 工学部, 助教 (60610863)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ケースメソッド / 教育工学 |
研究実績の概要 |
平成26年度は学習者の意見の距離を定量的に測る方法の検討を行った.検討した方法は以下の二つである:1)マンガケース教材においてマンガのコマへの注目の仕方で意見の距離を測る;2)コンジョイント法を使って読み取り方の傾向を測る. 1)は特にケース教材をマンガで描いたマンガケース教材に向けた方法である.学習者は,与えられた問を判断するのに特に重視したコマとその理由を記述する.その内容から学習者間の意見の距離を決めるという方法である.意見の距離が大きいと考えられる熟達者と初級者にこの方法を適用して,評価を行った.結果から,単純なコマの比較からは両者を分けることはできなかったが,コマを選択した理由のカテゴリを見ると熟達者は初級者よりも広い視点を持っていることを測定できた.ゆえに,この方法を使えば,学習者間の距離を測定できることが分かった. 2)は,ケース教材の読み方で特にキーとなるポイントをコンジョイント法の要因とすることで,学習者がどういったポイントを重視してケースを捉えたかを測る方法である.この方法はすでに共同研究者が提案していた方法であるが,今回は特に意見の異なりを測定することをできるかの確認を行った.結果としては,ある程度において定性的な測定と矛盾することが少なく,定量的に学習者の距離を決めることが可能なことが分かった. また,これらの測定手法の開発と並行して,今後の実験に向けて被験者の確保と評価のしやすいケース教材を開発した.これは学生でも取り組みやすいコミュニケーションの仕方に関するケース教材である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の第一段階である学習者の意見の距離を定量的に測る方法について,二つの方法の評価を終えている.二つの方法とは以下の二つである:1)マンガケース教材においてマンガのコマへの注目の仕方で意見の距離を測る;2)コンジョイント法を使って読み取り方の傾向を測る.しかし,予定していたケースリードエージェントの試作は行うことができなかった. また,1)の方法は当初の予定では,学習者の注目したコマである程度は違いを測定することはできるが,細かい部分まで比較するには定性的な情報まで必要であることが分かった.このため,何らかの方法で定性的な情報をカテゴリなどで定量的に変換する必要があることが分かった. 一方で,2)の方法は定量的な方法で学習者の距離を定めることはできる.しかし,それを確認するための実験設計と被験者の確保が困難であったため,現在は実験を終えているものの論文投稿は遅れてしまっている. 特に全体的な遅れをもたらした原因は被験者の確保である.使用していたケース教材がビジネス向けの話であったため,比較的募集が可能な学生だけではなく,社会人にも募る必要があった.この対策として,学生でも参加しやすい日常のコミュニケーションをテーマにしたケース教材を開発したため,今後の実験は被験者を確保しやすくなると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
本年度はケースリードエージェントの開発を行う.前年度で行う予定であったケースリードエージェントの試作と評価を早期に終えて,ケースリードエージェントを使ったe-Learningシステムの評価を行う. ケースリードエージェントの試作では前年度に開発した二つの方法での実装と評価を行う予定である.二つの方法とは以下の二つである:1)マンガケース教材においてマンガのコマへの注目の仕方で意見の距離を測る;2)コンジョイント法を使って読み取り方の傾向を測る. ただし,1)の実装にはケース教材にあわせたカテゴリを作るなどして,定量的に扱う者にする必要はある.これらの結果から具体的なe-Learningシステムの実装を決める. e-Learningシステムを運用して以下の二点について評価を行う予定である:a)被験者が繰り返し学習をする中でどのように観点を変化させていくかを評価する;b)多くの被験者が学習を行うことでデータベースと推薦されるデータにどういった変化が起きるかを評価する.
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