本研究の目的は,キャリア教育において主体的にキャリアを形成する能力や態度を育むための相互評価学習の実践方法をシステムと授業設計の両面から検討し,相互評価学習の実践モデルを構築することである.本年度は,相互評価学習システムの観点から学習方法を検討するために,LMSのプラグインを新たに導入し,既存システムとの相違点を検討した.また,eラーニング科目における実践をもとに,相互評価学習を中心としたeラーニング科目の授業デザインについて検討した成果を論文として投稿・公開した.以下,研究の実施計画に照らし合わせて詳細を記述する. ・相互評価学習システムの検討と開発:講義収録システムとMoodleの相互評価学習プラグインを新たに購入し,既存システムへのインストールと試験運用を行った.これまで,受講生のアンケート調査の自由記述の分析から,評価対象者の割当方法,評価対象選択画面での表示方法等についてそれぞれ改善の必要性が明らかになっており,新たなモジュールを用いた解決方法を検討した. ・相互評価学習の授業デザイン検討:eラーニング科目の実践における自己効力の変化と相互評価学習の認知の関連の検討をもとに,相互評価学習を中心としたeラーニング科目の授業設計における課題を考察した.また,その成果を教育システム情報学会誌に論文として投稿し,2017年発行の34巻3号に掲載された. 本研究により,対面授業とeラーニングの両方の実践をもとに主体的にキャリアを形成する能力を高める相互評価学習の実践モデルを提案し,キャリア教育の効果的な実践と相互評価学習研究に対して一定の成果を示すことができたと言える.しかしながら,相互評価学習の要素と効力感の因果関係については,特に質的な分析の研究余地があるため,今後の研究課題としたい.
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