研究課題/領域番号 |
26750094
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
東島 仁 山口大学, 国際総合科学部, 講師 (80579326)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 当事者参画 / コミュニケーション / ELSI |
研究実績の概要 |
先端生命医科学およびIT技術の急激な進展と普及に伴い、生命医科学と疾患当事者の関係は世界的にも、日本国内においても大きく変わろうとしている。本研究は、疾患当事者(コミュニティ)の研究参画という観点を取り入れることで、科学技術の展開に対する疾患当事者の関与可能性を広げ、疾患当事者の視点を踏まえた一種の社会的合意形成の成立可能性と、そこに至る道筋を探るものである。 本年度は前年度の調査結果に基づいて、日本の先端生命医科学研究と疾患当事者(コミュニティ)の関係について、0)当該領域に大きく関わるIT技術およびゲノム研究の進展と普及の影響、1)先端生命医科学から疾患当事者への情報発信、疾患当事者から生命医科学への情報発信、研究者(コミュニティ)と疾患当事者の直接のコミュニケーション機会の調査(前年度に収集したウェブデータについての補足・修正データ収集を含む)を進めた。これらの現在進行形の状況の調査と合わせて、2)疾患当事者と研究者の間に必要なコミュニケーションとはどのようなものか、どのような点に留意する必要があるのかという理念面の検討、そして3)そのような関係の実現にはどのような方法があり、どのような評価手段が必要なのか、既存の評価方法にはどのようなものがあるのか、という方法面の検討も進めた。0)~3)のいずれも、国内事例についての聞き取り調査や現地調査、文献およびウェブ調査、研究会の開催を通じた形で行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の実施計画には特色ある事例の深掘り調査と事例発掘をあげたが、申請時と比較した国内外の状況変化に伴い、国内全体の状況の把握への注力割合を多くし、深掘り調査の割合を減らす形で研究を進めた。理由は以下の通りである。まず関連するIT技術やゲノム研究が急激に進展および普及したこと、そして当事者参画への国際的な注目が高まったことにより、国内に着目すべき萌芽的取組が増えた。ただし萌芽的あるいは小規模な取組であるために情報公開が進んでいるとは言いがたい。そのため質的な分析を行う代わりに、国内関係者とのネットワーク構築やヒアリング、学会や小規模な研究会等を通じた情報収集の結果をもとに、前年度までに行ったウェブ調査の結果を見直して追加情報の収集を行うことで、定量的な分析を進める方針に切り替えた。次年度に予定していたアンケート調査については、現在分析中のウェブ調査の結果次第で、返答率に依存しないウェブ調査に切り替える。このように、国内外の状況変化に伴った形で研究計画の細部の変更を行ったが、研究計画の目標に沿った形で研究自体は着実に進めているため、おおむね順調であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
進捗状況に記載したように、質的な分析を行う代わりに、国内関係者とのネットワーク構築やヒアリング、学会や小規模な研究会等を通じた情報収集の結果をもとに、前年度までに行ったウェブ調査の結果を見直して追加情報の収集を行うことで、定量的な分析を進める方針に切り替える。次年度に予定していたアンケート調査については、現在分析中のウェブ調査の結果次第で、返答率に依存しないウェブ調査に切り替える。また、萌芽的事例が多く見られることから、研究会における当該領域の有識者等の議論の場の設定にも重点をおき、より実効性を見据えた形で検討を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
開催予定の研究会が講演者の体調不良によって複数回大幅に延期になり、そのうちの2回を次年度に回したため。ウェブ調査結果の追加収集に伴う調査計画の変更による現地調査の延期。
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次年度使用額の使用計画 |
1)癌および稀少疾患における疾患当事者の研究参画、コミュニケーション事例についての情報収集と議論を目的とする研究会の開催に充てる(会場費、講師陣および申請者の旅費、講師陣謝金)。2)現地調査の旅費に充てる。
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