現在,先端生命医科学と疾患当事者の関係は過渡期を迎えており,両者の関係の現状の冷静な分析と歴史的検討を踏まえた将来像のあり方の提示が早急に求められる状況にある。本年度は,疾患当事者の研究参画という観点から見た日本の先端生命医科学における疾患当事者の役割や両者のコミュニケーション状況について,1.前年度までに収集した国内動向(疾患当事者コミュニティ,研究者コミュニティ)に関するデータの分析を進めると共に,それらを補足すべく,2.特に急激な動きを見せている米国並びに日本の企業等の動向についてのウェブ上の公開情報をもととした基礎データを収集した.今後,両データの比較検討を進める予定である.これらと合わせて,これまでの研究結果並びに,急激に展開している国内状況を踏まえ,広義の疾患当事者ー研究者の間の当該領域の研究を扱う対話・コミュニケーションを組み込んだ「対話企画」の設計を進め,3.自閉スペクトラム症をテーマとする研究者ー疾患当事者間対話「聞イテミル・考エテミル!?:自閉スペクトラム症の現在と未来」(2017年3月)として試行し,基本データの収集を行った.現在,得られたデータの分析と,より良い設計についての検討を進めている.なお1の一部については,第37回日本臨床薬理学会(米子市)並びにAnnual Clinical Genetics Meeting 2017(アリゾナ州)において発表を行った.
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