研究実績の概要 |
考古遺物は貴重であるため、分析の際には、破壊が許されないこと・極少量のサンプリングしか許されないことがほとんどである。しかし、代表化学組成を得るのに有効なガラスビード/蛍光 X 線法は、測定試料の調製に比較的多量 (数百~数千 mg) の粉末試料を必要とする。そこで、本研究では、測定に必要な試料の量を大幅に削減した、正確な化学組成分析法の開発を目的としている。 極微量粉末試料 1.1 mg と融剤 11 mgとを用いて、直径 3.5 mm 程度、厚み 0.8 mm 程度のマイクロガラスビード分析試料の調製方法を構築した。検量線の作成には、頒布標準物質ではなく、試薬調合による検量用標準を用いた。この検量用標準は、定量成分を含む特級試薬を混合し、実試料と同じ希釈倍率 (試料 : 融剤 = 1:10) で調製したマイクロガラスビードである。定量成分は、主成分である Na, Mg, Al, Si, P, K, Ca, Ti, Mn, Fe および微量成分である Ni, Zn, Rb, Sr とした。 本法で、地球化学標準試料 (JB-1a, JR-3, JSd-2) を分析したところ、10 種類の主成分だけでなく、4 種類の微量成分も正確に定量することができた。また、本法による土器 2 種類および黒曜石の分析値は、従来法 (試料400 mg, 試料 : 融剤 = 1:10, 直径 35 mm のガラスビード) のものと概ね一致した。 考案したマイクロガラスビード/蛍光 X 線法は、試料の量が著しく少なく、測定径が小さいにも関わらず、岩石・堆積物・土器・黒曜石を良好に分析することができた。したがって、この方法は、極微量のサンプリングしか許されない土器などの考古遺物への応用が期待できる。
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