本研究では、香川県に所在する小豆島と、鹿児島県三島村という背景の異なる離島を対象として持続可能な博物館活動の適切なあり方のモデルの構築を目指した。離島が多い日本において、博物館の設置はおろか、アウトリーチ活動等の恩恵にさえ与りにくい地域が多いうえ、文化財の管理・公開・活用の役割が機能していない例もあり、文化財の破損や散逸の危険性もある。こうした実状を踏まえ、本研究では国内の離島を対象に実践的研究を行い、文化財の現状確認を行うとともに、各地域にふさわしい博物館活動のあり方のモデルを検討した。最終年度である平成29年度は、これまでの研究の総括として住民が主体的に関わる新しいモデルの検討を進めた。また、文化財の記録、保存、活用をはじめ様々な点から効果が高いと判断された、住民自らが参加する三次元記録活動とそのデータから作成した三次元プリンタによるレプリカの作成およびその観察等も実施した。研究期間全体においては、当初設定した段階的な計画をほぼ予定通り進めることができ、既知の文化財の資料化、記録保存の手法の検討、住民と協同の展示活動、地元小・中学校との連携、住民と協同の記録活動とそれぞれの活動における参与観察を行い、地域の人々が文化資源を“興味深いコンテンツ“として認識できる仕掛けとして、段階的に活動に取り組んでいくことが有効であることがわかった。2つの離島でそれぞれの活動を実施したが、これらの活動の効果はどちらにも有効であった。特に三次元記録の手法は、記録としての有用性はもとより、地域住民が記録・保存活動に参加し積極的に関わるようになるきっかけとしても有効と判断された。調査活動に自ら参加し、成果物を共有できるという過程を住民が経験することは、住民の地域への誇りの喚起と醸成につながるものとなり、持続的な活動の礎になると考えられる。
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