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2014 年度 実施状況報告書

酸化促進剤の添加による文化財建造物用油性塗料の塗膜形成研究

研究課題

研究課題/領域番号 26750103
研究機関独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館

研究代表者

赤田 昌倫  独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館, 学芸部博物館科学課, アソシエイトフェロー (90573501)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2016-03-31
キーワード文化財建造物 / 塗装 / 文化財科学
研究実績の概要

塗膜の形成状況に関する知見を得るため、木材片を支持体として調査研究をおこなった。その結果、酸化促進剤を添加しなかった塗料は重合乾燥に非常に長い時間がかかり、表面に近い部位のみ膜が形成されることを明らかにした。
酸化促進剤(一酸化鉛)の添加量としては、乾性油に対する重量比で0%,0.1%,1%,5%,10%とした。その結果、添加量0%では支持体への塗布から6ヶ月経過後、表面の重合乾燥は見られたが塗り層の内部から支持体直上にかけて塗料はゲル状のままであった。
添加量1%では塗布数日で塗膜表面の重合乾燥が顕著に見られ、支持体への塗布から6ヶ月経過後、内部から支持体直上についても重合乾燥が認められた。添加量5%,10%では塗布数時間で塗膜表面の重合乾燥が顕著に見られ、特に添加量10%では1ヶ月経過後、表面から支持体直上まで重合乾燥が認められた。添加量10%では急速な重合乾燥の影響によって塗膜の一部にクラックが発生した。この結果から、酸化促進剤を添加しなかった塗料は重合乾燥に非常に長い時間がかかり、表面は塗膜が形成されても、内部の重合乾燥は不十分であることがわかった。また酸化促進剤の添加量によっては、重合乾燥が早すぎるため塗膜の収縮が発生し塗り層全体に細かなクラックが発生することがわかった。
また、談山神社権殿など、油系塗料を使用した塗装修理の経過を確認しており、塗膜の堅牢性や色調の変化について目視調査をおこなった。その結果、柱の正面といった常時日光や風雨に当たっており、暴露時間が長い部位と、柱の背面などの暴露時間が少ない部位とでは特に光沢の度合いが大きく異なっていることがわかった。塗膜の劣化については柱正面の暴露時間が長い部位でも塗膜自体の大きな剥離等は認められず、比較的堅牢性を保っていることが分かった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

酸化促進剤を添加した各試料作製を完了させ、現在は試料の経過観察おこなっていることから、本年の研究計画を満たすことができたといえる。次年度も継続して暴露実験と各種分析調査をおこなう予定である。これらの報告は学会発表と講演会をおこなっており、中期計画に沿った結果の公開をおこなっている。次年度も経過観察を継続しつつ、各種分析結果について発表する予定である。

今後の研究の推進方策

実験サンプルを作製し、乾燥作業をおこなっており、本年は経過観察中である。ただし、色調変化の調査や成分変化に対する検証は随時おこなっている。来年度は塗膜形成状態が良好だったサンプルと最も悪かったサンプルについて、乾燥作業の温湿度など重合乾燥条件を変更することによる塗膜形成を検証するため追加実験をおこなう予定である。

次年度使用額が生じた理由

実験が多岐にわたったため、実験器具の購入が予定よりもやや多くなり、調査に必要な画像解析ソフトが本年度予算内で購入できなかった。そのため本年度予算を繰り越し次年度予算と合わせて購入をおこないたいと考えている。
また、次年度も前述の追加実験をおこなう必要があり、手板などの実験用試料(物品)を購入する予定である。

次年度使用額の使用計画

経過観察画像データの解析ソフトを購入する。
追加実験用の物品(手板、塗料)を購入する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2014

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 薬師寺東塔に使用された彩色材料の分析2014

    • 著者名/発表者名
      金旻貞,赤田昌倫,高妻洋成,鈴木智大,馬場宏道
    • 学会等名
      日本文化財科学会
    • 発表場所
      奈良教育大学
    • 年月日
      2014-07-05 – 2014-07-06

URL: 

公開日: 2016-06-01  

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