2011年東北地方太平洋沖地震時の沈降や地震前数十年間の急速な沈降、および地形学的に示唆される10万年間の隆起というように、東北地方太平洋側に位置する三陸海岸では対象とする期間によって地殻変動が異なって見える。当該地域において、海成段丘の存在を理由に10万年間の隆起傾向が指摘されてきたが、特に三陸海岸南部においてそれら段丘地形の分布は断片的かつ、地形形成時期を示す年代データが不足しており、海成段丘から地殻変動を解読するのは難しい。そこで、本研究では沖積平野に焦点を当てて、当該地域の隆起・沈降要因の推定に向けて沖積層の解析を行ってきた。最終年度にあたる平成25年度は、前年度に採取した沖積層試料や東北地方太平洋沖地震の復興工事で得られたボーリング柱状図や土質試料の解析結果をまとめるとともに、学会や論文で発表してきた。気仙沼大川平野において掘削した堆積物コアおよび、震災復興関係で得られた工事ボーリングの柱状図や土質試料の解析に基づいて、当平野の過去1万年間の堆積環境変化や堆積地形変化を復元した。その結果、当該地域が三角州平野の発達に該当する堆積地形が見られることを明示した(丹羽ほか,2015;地形)。さらに、これらの知見を踏まえて地殻変動傾向を見積もったところ、当該地域が過去1万年間全体として沈降傾向にある可能性を示した(丹羽ほか,2015;地学雑誌)。本年度はさらに、三陸海岸南部の他の平野のボーリングデータの収集なども行い、次年度以降に三陸海岸のより広域的な範囲で地殻変動データ取得をする準備も行った。
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