研究課題/領域番号 |
26750108
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
近藤 玲介 明治大学, 文学部, 助教 (30409437)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 北日本 / 海成段丘面 / 中期更新世 / pIRIR年代測定法 / 地形発達史 / テフラ |
研究実績の概要 |
本研究では,北日本の海成段丘を対象に従来とは異なる年代測定手法であるルミネッセンス年代測定法を適用し,北日本における中期更新世に形成された海成段丘の高分解能な地形面編年をおこなうことを目的としている.本研究を行うために,平成26年度には,北海道北部,本州北部において1)写真判読とDEMを利用した地形分類,2)海成段丘および関連する河成段丘などの野外地形調査,3)ボーリング掘削,4)pIRIR 年代測定の適用,5)その他室内実験(テフラ分析など)をおこなった. 野外調査では,北海道北部オホーツク海沿岸,北海道南西部渡島半島の日本海側および太平洋側,陸中海岸北部などにおいて,海成段丘の地形・堆積物調査をおこない,ルミネッセンス試料を採取した.あわせて,陸中海岸北部では,年代不詳の海成段丘面において機械式ボーリング掘削を行い,総長7mのコア試料を得た. 中期更新世以降の堆積物にルミネッセンス年代測定を適用するために,平成26年度にはpIRIR年代測定法の基礎的な測定条件(プレヒート温度など)を検討するための試験をおこなった.あわせて,一部の試料についてpIRIR年代測定を行い,地形面の年代を決定した. 北海道南西部の渡島半島周辺では,瀬棚平野や渡島東岸低地において地形分類とpIRIR年代測定結果よりMIS 7および9の海成段丘面を認定した.陸中海岸北部においては,野外調査とコア試料の記載,pIRIR年代測定の結果に基づき,標高約190~200mに段丘面をもつ海成段丘を被覆する風成層の基底付近がMIS 11ないしMIS 9に堆積したことが示唆された.また,陸中海岸のこれらの海成段丘面を覆う風成層の基底付近には,石英を大量に含むテフラが複数枚認められた.岩相の類似性から,ほぼ同緯度の内陸部に位置する胆沢扇状地の高位面において報告されているテフラとの比較をおこなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の中の実施項目では,北日本の広域にわたる沿岸部の中期更新世を中心とした海成段丘群を対象に,ルミネッセンス年代測定を適用して編年をおこなうことが中心である.これらの中で,平成26年度には,既に離水年代がある程度明らかにされている海成段丘を対象にpIRIR年代のクロスチェックをはじめにおこない,引き続き中期更新世に対比されると考えられる段丘の年代測定をおこなう計画であった. そこで,平成26年度には,対象地域内である程度離水年代が明らかにされている海成段丘として,陸中海岸の久慈周辺および北海道南西部渡島半島日本海側の江差南部において,洞爺テフラとの層序からMIS5eに対比されている海成段丘より試料を採取し,pIRIR年代測定法の妥当性を検討した.また,江差周辺では,確実にMIS5eに対比される海成段丘の一段上に分布する段丘面がMIS 7に対比される可能性が高いので,地形の新旧関係に基づきpIRIR年代値の妥当性の確認や基礎実験条件や測定条件の確認をおこなった.その後,陸中海岸の海成段丘群の中でも高位に分布する面や,北海道北部オホーツク海側や北海道南西部の年代が未知の海成段丘面の編年に取り組み,特に地形的に明瞭な段丘面がMIS 7ないしMIS 9に対比される可能性が指摘された.陸中海岸北部の田野畑村周辺では,地形的に明瞭な高位の段丘面が分布するが,これまで構成層の詳細は不明であった.本研究では,平成26年度の機械式ボーリングの掘削と野外調査によって,海成層と被覆する風成層が初めて記載された.以上の平成26年度の実施成果は,当初計画された研究予定を十分達成したものであるといえる.本研究で得られた成果の一部は,日本第四紀学会2014年大会およびLED2014にて発表をおこなった.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は,平成26年度とほぼ同様のフロー・規模で野外調査(北海道北部および陸中海岸)とボーリング掘削,pIRIR年代測定を中心とした室内実験をおこなう.特に陸中海岸で得られたコアや露頭から見出されたテフラについて,同定を試みる.また,前年度に確立したpIRIR年代測定の適用法を,コア試料より得られた試料に連続的に適用するとともに,露頭において採取された試料にもpIRIR年代測定の適用を引き続きすすめ,夏季頃までに年代値を算出する. 平成27年度の野外調査にあたっては,平成26年度の調査地とは異なり,北海道や陸中海岸を中心とした地域において,海成段丘を切る河成段丘や,周氷河作用により丘陵化が進む地域をも調査対象とする.北海道北部や陸中海岸では,斜面堆積物や河成段丘地形と海成段丘面の関係から,旧汀線高度を復元する.平成27年度秋季には,陸中海岸において前年度と異なる比高の段丘面において総長10mの機械式ボーリング掘削をおこなう.これらの結果に基づき,平成27年度末には日本地理学会において絶対年代値に基づくMIS 7,9を中心とした中期更新世の海成段丘の編年結果についての成果を発表する. 最終年度である平成28年度は,上半期の内に北海道北部および陸中海岸において補備的な野外調査をおこなう.pIRIR年代測定などの室内実験は,上半期までに概ね終了させる.平成28年度下半期には,中期更新世のグローバルな海面変化曲線と本研究の編年結果を比較し,本研究対象とした海成段丘の形成年代について海洋酸素同位体のサブステージレベルでの対比を確定させ,地形発達史を明らかにする.これらの成果は,平成28年度末までに海成段丘のサブステージ区分結果と地盤運動について国内の学会で発表するとともに,総合的な成果を査読付き国際誌に投稿する.
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