研究課題/領域番号 |
26750111
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研究機関 | 気象庁気象研究所 |
研究代表者 |
川瀬 宏明 気象庁気象研究所, 環境・応用気象研究部, 研究官 (20537287)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 山岳積雪観測 / 地域気候モデル / 地域気候変動予測 |
研究実績の概要 |
立山黒部アルペンルートに設置したインターバルカメラを回収し、冬季の山岳域の日々の積雪深を読み取った。2015/16年冬季は2014/15年冬季と比べていずれの地点においても積雪が少なかった。特に標高の高い観測点での少雪が顕著であった。 2015/16年冬季の少雪の再現及び要因分析を行うため、格子間隔2kmの地域気候モデルを用いた積雪再現実験を行った。このデータは積雪モデルや河川モデルの計算用としても整備した。計算は2000/01年から2015/16年までの16冬季を対象に実施した。その結果、標高2450mの室堂平付近の積雪は、過去16年でも最小であり、近年稀に見る少雪であったことが分かった。一方、標高の低い地域の積雪は、平年よりやや少ない程度で、顕著な少雪ではなかった。大気場の解析から、高標高地域の顕著な少雪は、3月と4月に冬型と温帯低気圧による降水がほとんどなかったことが原因であると考えられる。 地球温暖化に伴う中部山岳域の雪の将来変化を調べたところ、冬季積算降雪量は21世紀末に大きく減少するが、10年に一度発生するような強い降雪は増加する可能性が高いことが分かった。この研究成果は国際誌Climatic Changeに受理され、2016年9月23日に気象研究所から報道発表した。本成果は複数の報道機関に取り上げられ、9月24日付の朝日新聞一面に掲載された。 本課題で得られた研究成果は雪氷研究大会や立山研究会などで発表した。また、得られた成果を富山県民に分かりやすく伝えるため、富山市において富山シンポジウム「地球温暖化でどうなる?富山の冬」を開催した。シンポジウムには研究代表者の川瀬の講演に加え、立山カルデラ砂防博物館学芸課長の飯田氏、NHK富山の気象キャスター木地氏、立山黒部貫光の永崎氏に講演者・パネラーを依頼した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
立山黒部アルペンルートにおける積雪観測データの取得は順調に行われ、また気象モデルを用いた再現実験や地球温暖化による将来予測についても、論文発表及び記者発表を行い高い評価を得た。当初予定していた富山市でのシンポジウムは満員で盛況に終わった。最新の観測データも踏まえた論文執筆及び研究発表を最終年度に行う。
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今後の研究の推進方策 |
立山黒部2016/17年冬季のデータを回収し、地域気候モデルを用いた同期間の再現実験の結果と比較する。気象モデルの結果を積雪モデル及び河川モデルの入力データとして加工する。2016/17年冬季の観測・シミュレーション結果とH28年度までの成果ともとに学術論文の執筆及び学会発表を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初購入予定であったハードディスク等の物品が不要となったため。また、予算の都合上、国際学会への参加を取りやめたため。
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次年度使用額の使用計画 |
データの収集のための出張、及び研究成果発表のための学会・研究会参加旅費
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