本研究では,対象業務を確実に遂行できる力量を持つ要員を対応付けることで,要員の力量管理に基づいて質保証を実現する実践可能な方法論の構築を目的としている.平成28年度は,前年度までの「(1)医療業務の構造と保有力量の構造を考慮した力量評価項目の開発」に基づき,「(2)力量評価に基づく要員配置を基軸とした業務プロセス設計方法の開発」を行った。下記で実施事項を説明する. ①臨床検査業務における要員の力量評価:前年度までに開発および精緻化を行った力量評価項目を用いて、侵襲的手技において精緻化した力量評価項目の適用可能性および有用性を確認した。平成28年度も同様の力量評価項目を用いながら、評価を行う面接の進め方の精緻化を通して、要員の力量評価を行った。臨床検査業務は個々の患者状態の考慮を含めた専門性の高い知識を必要とすることから、生体侵襲を伴う医療業務における検討に貢献すると考えた。 ②要員の力量評価に基づく業務プロセス設計方法:各要員の力量レベルが明確になれば、業務プロセスの標準化の程度が明らかになる。高い力量レベルを持つ要員が十分に確保できなければ、業務プロセスの標準化を進め、個人の力量に依存しない業務プロセスの設計をしておく必要がある。このため、力量評価結果に応じて、対象となる要員の力量不足が認められる業務については、SOP(標準業務手順書)の整備を行うこととした。 ③力量評価に基づく業務プロセス設計の有用性評価:要員の力量評価を継続することで、力量評価結果に基づく教育および当該業務の再設計を進めることで、業務の質向上を期待できることが分かった。本研究では、要員の力量レベル向上の観点から評価したところ、要員の配置換えを行った業務以外では、レベル向上を確認できた。
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