研究課題/領域番号 |
26750121
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
秋山 靖博 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (00610536)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 機械安全 / 装着型ロボット / 歩行アシスト / 転倒 |
研究実績の概要 |
本研究は,装着型ロボットの実用化に際して問題となる,ロボットの装着から生じる動作制約を原因とする転倒 (以下,装着起因型転倒)の中でも日常生活環境における転倒に注目し,転倒要因の抽出,模擬日常環境における実験に加え,転倒挙動のシミュレーションを行うことで装着起因型転倒リスクの特定および軽減方法の提案を行うことを目的としている. 本年度は,リスクアセスメントにより,高い頻度での発生が予想される転倒要因として床面設置物へのつまずきとドア通過時の側面接触を抽出した.次に,実験室環境での再現を行うため,金属フレームを主体とした転倒惹起装置を開発した.これらは,任意のタイミング,位置で転倒を惹起するための可動性と,接触時にも移動しないための固定性を有する構造とした.また,被験者の歩行速度,テンポを固定するため,それらを被験者にリアルタイムに提示する歩行安定化装置を開発した.さらに,装着型ロボットにも改造を加え,障害物との接触に対する強度を向上すると共に,接触部位にプレートを追加し,安定的な接触を可能とした. それらの日常生活環境再現装置を用いて,名古屋大学工学部倫理部会の許可の下,外部の被験者を用いた歩行実験を実施した.実験は複数の衝突状態についてそれぞれ複数回行い,接触後の動作の計測を通じて転倒回避戦略の分類および定量評価を行った.その結果,特定のタイミングにおいて大きくバランスを崩しやすいこと,衝突の部位によって回避戦略が変化する事等が明らかとなった.これらは部分的にはすでに知られている転倒回避戦略と一致するものの,条件によってはこれに一致しないケースが見られ,装着型ロボットに特有の条件も存在することから,装着型ロボット装着時に固有の転倒回避動作・転倒モードの存在が示唆された.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の研究計画において予定していた,転倒要因のリスク分析・模擬日常環境装置の設計製作・学内倫理部会の承認を得ての実験・実験結果による高リスク要因の抽出,の各項目を無事に終了した.具体的には,足元突起物に対するつまずきおよびドア通過時の側面接触を想定し,それらを模擬する実験装置を製作した.被験者を対象とした実験によりそれらの中でも特定のタイミング・部位において特に大きくバランスを崩すことが明らかとなった. さらに,翌年度に用いる転倒分析指標についても,候補となる複数の指標について算出を進め,その妥当性を検証した.また,今後のN数を増やした実験において重要となる被験者の歩容安定化についても装置の改修を進め,全試行中の有効サンプル率を向上させることに成功した.加えて,想定される日常生活動作の対照ケースとして,ロボット非装着時の通常動作の計測,解析を行っており,今後の安定度指標定量化において有効な比較サンプルとなると期待される.
|
今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り,これまでの実験で特定されたリスク要因について,被験者数を増やして実験を実施し, 統計的有効性を検証する.同時に,計測装置を改修し,接触に伴う筋電位の反応,ロボットとのずれ等,転倒回避動作をより詳細に計測する.また,それを用いて転倒リスク評価指標の開発・評価を行い,有効な指標を提案する.その際,被験者の年齢,体格等の属性を考慮し,可能であればそれらの影響についても評価する. 次に,実験結果に基づく外挿シミュレーションによって受傷の頻度,重篤度を推定し,定量的なリスクアセスメント指標を構築する.外挿方法については,単に計測時の動作を継続するのみではなく,足の振りだし,体幹の回転,腕による防御などの動作を想定し,それらを実装することでより実態に即したシミュレーションを行う.そうした防御動作については,現象を部分的に切り出して反射・反応を実験的に計測し,その妥当性及び具体的な発生過程を見積もる予定である.
|