本研究は、船舶の航行データである船舶自動識別装置(AIS)から送信されるデータを利用することで大津波来襲を早期に把握し、それを陸上に通達するシステムの構築を目的とした研究である。これを実現するにあたり、27年度は前年度に構築した船舶が航行中に津波に遭遇したかどうかの津波応答判定アルゴリズムを基に波早期検知・通報システムの基盤構築に取り組んだ。 本年度の成果として、①現在、各航行船舶から送信されているAISデータを受信しリアルタイムで船舶状況を表示・データを蓄積するシステムを構築した。また、②それらをクライアントとしてネットワーク化を行い、③各クライアントで受信・蓄積されたAISデータを統合・集約するデータサーバシステムを構築した。①のシステムについては、前年度に構築した津波応答判定アルゴリズムが組み込まれており、津波発生時には沿岸域への予想津波波高、予想到達時間が提示される。また、同システムは地理情報システムを用いてデータの可視化を行っており、一度に多くの情報をわかりやすい表示で提供できる。②、③により構築したクライアントサーバシステムでは多地点で取得されたデータを統合収集することで高精度なデータを作成し、それらを①のクライアントシステムに送信することでより広域での津波状況の予測・把握が可能となる。これらのシステムについて運用実験を行い、AISデータの受信と航行船舶のリアルタイム表示機能の検証、津波時を模試した異常挙動を示す航行船舶の抽出機能の検証、複数のクライアントとサーバ間でのデータ送受信のロバスト性の検証を行った。
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